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「Herokuの対応は遺憾」 Skeb障害、機会損失は1500万円相当 クラウド丸ごと乗り換え約18時間で解決

» 2022年12月26日 11時20分 公開
[ITmedia]

 クリエイターに有償でイラストなどを発注できるサービス「Skeb」で12月23日から24日にかけて発生した障害について、運営元のスケブ(東京都千代田区)は24日、損失の詳細を公開した。

 「Skebでは月間約5億円の取引があるが、今回の障害で1500万円相当の取引の機会損失が発生した。しかし、12月26日午前8時現在もHerokuから詳しい状況説明はなく、詳細な経緯は判明していない。厚いサポートをうたうエンタープライズ契約を締結しているにもかかわらず、このような対応は大変遺憾」(同社)

 障害は23日午後12時22分から24日午前7時にかけて発生。期間中、ログインなどがしにくい状態だった。原因はサービスの提供に使っていたクラウドサービス「Heroku」のアカウントに起きた問題。「Skebは全てのサーバとシステムをHerokuに設置していたが、障害発生時刻より同サービスのアカウントが理由の通知なく利用できなくなった」(同社)

photo 障害の概要(スケブの発表から引用)

 事態を受けたスケブは、Herokuのサポート窓口に問い合わせ。しかし返答がなかったことから、Heroku提供元の日本法人であるセールスフォース・ジャパンを通して再度状況を確認しようとした。それでも復旧の見込みが分からなかったので、Herokuの利用を中止し、全てのサーバ・システムを別のクラウドサービスに移管して対応した。その後、セールスフォース・ジャパンからも「Herokuから応答がない」旨の返信を受け取ったという。

photo 障害対応の時系列(スケブの発表から引用)

 短時間での移行に成功した背景については、事前に作ったコンテナイメージ(アプリケーションと関係のあるソフトウェアをまとめたデータ)が役立ったと説明している。

 「スケブではエンジニアに対して開発環境の指定を行わず、それぞれがWindows、Mac、Ubuntuといった好みのOSを用いて開発している。どの環境でも開発ができるよう、Skebの全てのシステムはオフラインの仮想環境で動作するコンテナイメージを作成している。別のクラウドサービスに移管する事前の検討や想定は今まで行ったことがなかったが、このコンテナイメージがあったことで、事前準備なく1日未満で新しいクラウドサービスに問題なく移管することができた」

 スケブは今回の障害について「大きく混乱を招く事態となった」とコメント。長時間サービスが利用できなかったことや、障害によってメールマガジンの配信システムも使用できず、状況の説明に遅れが出たことなどを謝罪した。問い合わせを行ったセールスフォース・ジャパンに対しては「夜間も親身に対応してもらったセールスフォース・ジャパンの担当者には感謝する」としている。

 期間中、Twitterのプロモーション機能を活用して障害の現状を発信する取り組みも行った。「Twitter上で『Skeb』という単語をツイートや検索した人に対して、障害情報のツイートが表示されるように設定した」(同社)という。

 スケブは今回のトラブルを受け、夜間に障害対応に当たった作業員に手当を支給する制度を新設する方針も発表した。対象の従業員に対し、法定割増賃金に加え、3万円の現金を支給するという。開始は1月から。制度の開始前なので、今回の障害に対応した従業員には、福利厚生としてAmazonギフト券を支給したという。

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