一方、業界に大きな衝撃を与えたのが、主として1GHz以下の周波数帯を指す「プラチナバンド」の再割り当てだ。2022年10月の電波法改正で競願すれば周波数免許の再割り当てができるようになったことを機として、同社は広域をカバーしやすいプラチナバンドの再割り当てを経営上の最重要課題に掲げ、積極的に声を上げるようになったのだ。
だがその要求は、「1年以内に再割り当てを」「工事費用は既存事業者が全て負担」と、貴重なプラチナバンドを奪われる3社には全く受け入れらない内容であったことから議論は過熱を極めた。総務省で進められた議論の中でも、楽天モバイルの代表取締役社長である矢澤俊介氏が、自社の主張が認められなければ特定の1社からプラチナバンドを奪うことも辞さないと主張するなど非常に強硬な姿勢を見せ、競合からは疑問の声も多く挙がっていた程である。
にもかかわらず、総務省がそうした楽天モバイルの主張を全面的に受け入れた再割り当て案を取りまとめたことで、一層の波紋を呼ぶこととなった。このことが楽天モバイルのプラチナバンド免許獲得を大きく前進させた一方、3社にとっては楽天モバイルのために1000億円前後の費用を払ってプラチナバンドの一部を失わなければならず、受ける影響が甚大だというのも確かである。
そうしたこともあってか、NTTドコモは11月に「狭帯域700MHz帯」を4Gに割り当てるという提案をしている。これは携帯電話向けに割り当てられている700MHz帯のうち、隣接する地上波デジタルテレビ放送などとの電波干渉を防ぐために空けている周波数帯の一部(アップロード・ダウンロード合わせて3MHz幅×2)を4G向けに利用できないか? というものだ。
700MHz帯は標準化団体の3GPPで「バンド28」として標準化がなされており、既存のスマートフォンなどの多くが対応している帯域であるし、NTTドコモによると3MHz×2という狭い幅でも、楽天モバイルの契約数の倍以上となる1100万契約は収容できると試算している。無論、実際に使えるかどうかはこれから技術検証などをしていく必要があるのだが、もしこの周波数帯が4Gで使えるとなれば、再割り当てよりも円満的な形で楽天モバイルが当面利用できるプラチナバンドの免許を獲得できる可能性がある。
狭帯域700MHz帯で円満解決を得るのか、さらなる波乱を巻き起こす再割り当てに向けた競願へと突き進むことになるのか。楽天モバイルがどのような形でプラチナバンド免許を獲得するのかが、2023年の大きな注目ポイントとなることは間違いないだろう。
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