筆者は月に何度か病院に行き、処方された薬を薬局で購入している。1年にたまる医療費の領収書は50枚以上。昨年の確定申告時は、領収書の山を手計算で足し合わせたのにギリギリ控除最低額(年10万円)に届かず、数時間の作業が完全に無駄になりほとほと疲れた。
今年も、領収書の山を前に「そもそも計算すべきか」「全部足して10万に届くだろうか」「控除額に対して作業の手間が大きすぎるからあきらめるか」……などと逡巡(しゅんじゅん)していた。
が、国税庁が先日公開したゲーム実況風動画で「スマホとマイナンバーカードで医療費控除が簡単」と知り、「ほんまかいな」と半信半疑で試し、驚いた。本当に一瞬で、作業が終わったからだ。
確定申告には、面倒で非生産的な作業がいくつもあるが、その一つ「医療費控除額の計算」が消滅したのだ。泣ける。ありがとうマイナポータル(ちなみに、医療費の領収書自体は自分で保管しておく必要がある)。
注意点もある。マイナポータルに表示される医療費は、公的保険を使った医療費に限られる。FAQによると、自由診療の代金や差額ベッド代、立て替え払いした医療費などは対象外だ。医療機関までの交通費もマイナポータルには反映されず、別途、計算が必要だ。
家族の医療費を合算して申告する場合はどうだろうか。FAQを参照すると、家族がマイナンバーカードを持っていれば、マイナポータルで家族の「代理人設定」を行えば、家族全員の医療費を合算できるという。
また、マイナポータルとe-Taxを連携していれば、医療費情報をe-Tax画面に自動で取り込めるという。
ちなみに昨年、ちまちま手計算した筆者の医療費は約9万2000円で、控除対象に8000円ほど届かなかった。ただ、申告作業の最後に医療費を集計したため、疲れ切っていて見落としや計算ミスをしていた可能性もあるし、そういえば交通費を足し忘れていた。
自営業の確定申告は面倒な作業が多すぎて、医療費控除は「計算が面倒だから諦める」対象になりがちだ。マイナポータルで簡単に計算できるようになったおかげで、諦めずにすむようになったのはありがたい。
一方で、「政府は医療費をここまで正確に把握しているのに、今までなぜ、医療費を手計算させられていたのか」と不審にも思った。政府や自治体が1年分を合算して、控除対象なら自動で控除してくれればいいのに……。医療保険の給付金などとの兼ね合いなどがあるにせよ、「あなたの昨年の医療費は◯万円あり、所得控除できる可能性があります」と提案してくれてもいいのに……。いけずやわぁ。
マイナンバーカードには批判も大きいが、政府が把握している国民の情報を、国民自身がいつでもチェックできるメリットがある。医療費だけでなく、前年の住民税や国民年金の支払い期間、検診の記録などもすぐに確認できる。
マイナンバーカードを持っているなら、マイナポータルに何が載っているか確認し、せっかくならフル活用するのがオススメだ。
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