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気球で成層圏へ、“宇宙遊覧”を国内ベンチャーが2023年度中に商業化 将来は100万円台に

» 2023年02月21日 12時30分 公開
[山川晶之ITmedia]

 国産スタートアップの岩谷技研(北海道札幌市)は2月21日、気球で高度2万5000m(成層圏)の世界を体験できる“宇宙遊覧”プロジェクト「OPEN UNIVERSE PROJECT」を開始したと発表した。2023年度からサービス提供を予定している。

有人遊覧に利用する2人乗りキャビン

 宇宙遊覧は特別なトレーニングなしに高度2万5000mまで到達できるのが特徴。同社によると、気球は自動車や自転車、バイクよりも事故率は抑えられており、ガスで浮遊するため低コストで旅ができるという。ロケットと異なり離陸スポット設置には制限が少ないため、例えばリゾート地に低コストで設置することも可能という。

自社製造の気球で実際に撮影した成層圏の様子

 上昇に2時間、高度2万5000mで1時間、下降に1時間、トータル4時間のフライトとなる。着陸ポイントは海を予定しており、落下地点を事前に予測し、クルーザーで先回りして気球を迎えるとしている。気象条件によってフライト日が変動するため、バッファを持たせるため旅として1週間ほどのパッケージになるという。そのため、気球の離陸ポイントには宿泊施設も兼ね備える。

高度2万5000mで1時間滞在予定という
その後、予測ポイントに先回りしたクルーザーが気球を回収する

 気球部分は、岩谷技研が自社開発、自社製造したもので、累計300を超える気球を製造してきたという。飛行にはヘリウムを使用し、フライト後はその95%を回収できるという。フライトはこれまでに300回、高度4万mまでの上昇実績を持っており、有人飛行も20回以上実施。キャビンも自社開発、自社製造。2人乗りでそのうち1人はパイロットが座る。

 なお、気球・キャビンともに大部分にプラスチックを使用。機内の気圧変化は旅客機より低く、飛行時の振動は新幹線より低いという。また、大きな温度変化もないとしている。安全性能として、非常時は気球がパラシュートに変形(特許取得済み)。キャビンにもパラシュートが搭載されており、搭乗員にもパラシュートを装着。計4つのパラシュートで安全性を高めているという。

15の特許を取得済み

 21日より第1期の搭乗者を5人募集する他、パイロット候補生も若干名募集。候補生は正社員として雇い入れる。また、他社との共創も予定しており、宇宙港や発射場の周辺施設、アメニティなどともコラボレーションを予定。最初の共創パートナーとしてJTBが名乗りを上げている。

 気になる価格だが、当初は2400万円を予定。ただし10年後には100万円台に抑えることを目指す。「将来的には世界1周の船旅あたりに抑えられるのは」(岩谷圭介社長)としている。当初は北海道十勝地区で実施予定だが、今後より多くの人が利用できるよう日本中に展開予定としている。最終的には6人乗りのキャビンを投入予定だ。

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