そもそもなぜ、1台と超小規模ながら市販するための車両を作ったのか。それは、Turingが目指す姿にヒントがある。
Turingは、AIに精通した2人が設立したスタートアップではあるが、目標は自動運転用のAI開発ではなく自動運転AIを搭載したEVメーカーになることだという。AIはその車両に搭載するために開発しているものであり、自動車メーカーなどに外販する予定もないという。掲げるミッションは「We Overtake Tesla」だ。
なぜ自動車メーカーなのか。同社取締役COOの田中氏によれば「ソフトウェアに理解のある自動車メーカーがあったら面白いのでは」という仮説がもとになっている。「今はクルマを作る能力はないが、AIなど完成車メーカーにはないエンジニアのチームが作れている。(ソフトウェアの文化をベースに)クルマを作る能力を獲得していけば、その会社のクルマはきっと素敵なものになるはず」と語る。その筆頭はテスラであり、今後もリスペクトしつつベンチマークを続けるとする。
また、自動車産業が発展している日本ならではの立ち位置もある。国内でもEVのスタートアップはいくつかあるが、自動運転までカバーするEVスタートアップはほぼ皆無だろう。「中国や米国ってEVスタートアップが山ほどある。日本だとクルマで挑戦となると、トヨタやホンダ、日産がやるよねとみんな思っている節がある」「そこにチャンスがある。誰もやらない、やれると思ってないから」(田中氏)
そして1台のみ、かつ最先端でもないレベル2でクルマを市販したのも、自動車メーカーを目指すために必要なステップという。
「自動運転車ってずっと開発できちゃうんですよ。なので(市販化などを発信して)知ってもらうことが大事。『こいつら頑張っているな』というのをいろいろな形で知ってもらい、応援してもらう状況を作る」(田中氏)。
もう1つがサプライヤーへのアピールだ。「海外は違うが、国内だと今は基本的に門前払い。国内は(自動車の)スタートアップがそもそもないし、付き合う道理がない。彼らとしてもそこにリスクを取りに行く意味がない」という。市販車は「あいつら本当にクルマを作ろうとしている」というポーズを伝える狙いもある。
技術的には成長段階であっても、定期的に区切りをつけて市販車として出すことで、ユーザーと業界にTuringを知ってもらう機会を作っていくわけだ。
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