その第1号は、既視感のある姿で筆者を迎えてくれた。エンブレムには見慣れない「T」のマークがあるが、ボディーはどうみてもトヨタの高級車ブランド「LEXUS」のラグジュアリーSUV「RX」である。そう、このクルマはRXをベースにTuringが自社開発した自動運転システムを組み込んだカスタムカーなのだ。TのマークはTuringのロゴだった。
車内に乗り込むと、2つのスクリーンが目に入る。特に手前の大型スクリーンは主張がすごい。これはTuringが後付したもので、自動運転システムが見ている世界を映し出す。例えばセンターラインをどう認識しているかをリアルタイムで示してくれる。視認性は抜群だが、奥にあるスクリーンは少し見えづらかった。
早速車道に出て自動運転を試してみる。ハンドル右下にあるレバー先端のボタンを押し込むとシステムがスタンバイ状態になる。右左折のない一本道に出れば、そのままレバーを下に倒すだけで「ピロリン♪」という音とともに自動運転システムがハンドルとアクセル、ブレーキ操作を掌握する。
運転自体はとてもスムーズだ。画面を見ると車線と前方の車両をきちんと認識し、それに合わせてハンドル操作と加減速をしていることがわかる。アクセルやブレーキ、ハンドルを操作すれば瞬時に人間の運転に戻るため、とっさの対応も問題なさそうに感じた。混雑した道路状況ではない郊外のシチュエーションで、自動運転も運転支援に限られる「レベル2」ではあるものの、創業2年目のスタートアップが市販できる自動運転システムを開発したことに驚く。
ただし、法規上の観点から右左折には対応しない他、ナビゲーションとも連動しておらず、周囲の状況を把握しながらリアルタイムに処理しているに過ぎない。路肩に停まっているクルマを追い越すこともできず、そのまま停止してしまう。障害のない一本道を運転するのであれば快適そのものだが、一般道で使うケースはそんなに多くないだろう。他のレベル2車両と同じく、直線が続く高速道路で利用すると便利そうだ。
ちなみに、ベースがLEXUSなのでトヨタの運転支援システムも搭載されている。が、このカスタムカーでは“お休み”してもらっているという。システムを操作する時に使ったハンドル右下のレバーは、もともとトヨタ製のクルーズコントロールを操作するために使うものである。言うなれば、車体をTuringの運転支援システムがハックしている状態に近い。
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