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マンガ家、「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」に行く ドラマ通りの魅力と原作ファンが覚えた違和感サダタローのゆるっとマンガ劇場(1/5 ページ)

» 2023年06月04日 11時35分 公開
[サダタローITmedia]

 5月26日に映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」が公開されました。荒木飛呂彦さん原作の人気まんが「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフ作品の実写映画化で、公開3日の興行収入は3億1400万円を突破、週末興行収入ランキングで邦画1位と順調な滑り出しを見せています(興業通信社調べ)。

映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」 ©2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 ©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 この世で「最も黒い絵」を求めパリのルーヴル美術館に向かった主人公の岸辺露伴を待ち受ける奇妙な物語が描かれる本作は、先んじて放送されていたTVドラマ「岸辺露伴は動かない」シリーズのエピソードの1つという位置づけです。原作マンガの独特の世界観を巧みに実写映像に落とし込んだことで評価の高いドラマシリーズの初の映画化ということで、ボクも相応の期待を胸に劇場に足を運びました。

 ドラマシリーズと同じスタッフ、キャストによって作られた本作は、期待通りの面白さでした。マンガのホラーテイストに映画独自のオリジナルエピソードがうまくマッチし、ミステリーの要素もプラスされています。

 高橋一生さんや飯豊まりえさんら俳優陣のお芝居が相変わらず素晴らしかったのはもちろんですが、今作では謎の女性・奈々瀬役の木村文乃さんの怪しげな雰囲気に個人的にはゾクゾクしました。奈々瀬とは何者なのか? 黒い絵との関わりとは? 彼女に対する露伴の心情は……? キャラクターの心情や人物像を原作以上に丁寧に描きながら、黒い絵の謎に迫っていくストーリーは見ごたえ十分です。

 一方で、登場人物を丁寧に描くことで原作にあったキャラクター達のミステリアスな魅力が減ってしまっているとも感じました。オリジナルエピソードによるストーリーの補完も、登場人物の行動動機を明確にしてしまうことで、荒木作品独特の、登場人物が何をしてくるか分からない不安感や怖さが薄れてしまっていたのが個人的には残念です。

 とはいえ、丁寧に描かれていることで誰でも分かりやすく、楽しく見ることのできる作品になっているのは事実です。マンガやドラマのファンの人はもちろんですが、これまで荒木飛呂彦さんの作品を見たことのない人にこそ一度見てほしい映画だなと思います。

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