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ヤバいと話題の“日本の住所表記” 何がそんなに大変? ゼンリンに聞いた(2/2 ページ)

» 2023年06月13日 12時43分 公開
[松浦立樹ITmedia]
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大切なのは“表記ルール”の周知

 表記が揺れる要因はさまざまあるが、大半の表記揺れは「データの入力段階で起こる」とゼンリンは指摘する。例えば、顧客に個人情報などの入力を求める際、半角や全角表記などに統一するルールがなければ、表記揺れが発生する。これは企業内でも同様で、データ入力をする社員たちの中で、明確な表記方法を共有していなければ、バラバラな表記のデータを入力してしまう。

 他にも「どのように利用するのか決まっていない状態のデータをそのまま使う」「表記方法が変更されたにもかかわらず、以前の表記方法のデータをそのまま使用する」なども表記揺れが起こるよくあるケースだという。

 ゼンリンは「入力ミスによって起こることも多いが、意味としては間違っていないだけに修正されずにそのままデータとして登録されるケースも多い。このことも表記揺れの問題点」と述べる。

 また、企業にとって表記揺れはリスクとなる可能性があるとも指摘。ゼンリンは「物流の混乱」を例に挙げ、以下のように述べる。

 「商品やDMなどの遅配、未配、二重送付、再配達などが生じた場合、その企業に対する信用が失墜するリスクがある。また、これらを解決するためにリソースやコストが増えるなど、場所が特定できず非効率になる事象も考えられる。特に近年DX化が進む中、ドローンや自動運転など、機械が住所を特定する際に問題となる可能性もあるのでは」

DMを送付する際に起こり得るリスク

表記揺れの解決は、いち個人やいち企業では“不可能”

 では一体どうすれば住所の表記揺れは解消できるのか。ゼンリンは「ベースレジストリ」を定める必要があると説明する。ベースレジストリとは、公的機関などで登録・公開され、さまざまな場面で参照される、人や法人、土地、建物、資格などの社会の基本データを指すという。

 「ベースレジストリを定めて、オープンデータ化し、皆が共通の認識を持って、国や自治体、企業、個人の全てが利活用することが必要だと考えている」(ゼンリン)

 つまり住所の表記揺れは、地図情報の取り扱う事業を手掛けるゼンリンをもってしても単体では解決できず、いち個人やいち企業が解決できる問題ではないということになる。河野大臣はこの解決策として、AIを挙げたが、どのような利用方法が考えられるのか。

 ゼンリンは「ベースレジストリが定まることが基本としてあるが、表記揺れを補正するための辞書ファイル(住所表現の置換パターンのリスト)を作成する際などにAIは役立つかもしれない。もしくはAIを活用し、辞書ファイル無しでも自動で文字置換を行うなどの効率化の可能性も考えられる」と見解を示した。

子会社のゼンリンデータコムでは住所表記揺れの解説記事を公開中
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