公正取引委員会は9月21日、ニュースメディア事業者の記事をまとめて表示する配信プラットフォームに関する実態調査報告書を公開した。ニュースメディアと配信プラットフォーム事業者間の取引について調査したもので、ニュースポータル「Yahoo!ニュース」を提供するヤフーに対し「優越的地位にある可能性がある」などと指摘している。
ニュースメディアは、自ら作成したコンテンツを配信プラットフォームに提供する代わりに、何らかの対価を受け取る契約を結んでいる場合がある。対価は閲覧数に応じた許諾料や、配信プラットフォーム上の記事を閲覧した読者の送客などが挙げられる。
中でもYahoo!ニュースは巨大なサービスの一つで、公取委の調査によれば配信プラットフォームと契約を交わしている調査対象のうち、6割近くのニュースメディアが「許諾料の支払い額が最も多い」と答えたという。送客についても同様で、ニュースサイトへの流入における割合は「ライブドアニュース」(0.3%)や「LINE NEWS」(7.7%)といったサービスに対して23.3%と大きく差をつけていた。
さらに、およそ4割のニュースメディアが配信プラットフォームとの取引を続ける理由として「プラットフォームから支払われる利用料が、事業の継続上不可欠になっている」と回答。ヤフーは送客が見込める検索プラットフォームも提供しており、取引の必要性を高める要因になり得ることなども鑑みて、同社が優越的地位にある可能性を指摘した。
「ニュースメディア事業者にとって、Yahoo!ニュースを提供するヤフーとの取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、ヤフーが著しく不利益な要請などを行ってもこれを受け入れざるを得ない場合があると考えられることから、ヤフーは、取引先であるニュースメディア事業者との関係で優越的地位にある可能性がある」(公取委)
LINE NEWSを提供するLINEや「Googleニュース」を提供するグーグルなど、ヤフー以外の配信プラットフォーム事業者についても「消費者がニュースコンテンツを探す際にニュースメディアサイトを利用する割合は低く、ニュースポータルを利用する割合が高いことから、個別の取引関係において優越的地位にある可能性は否定されない」とコメントしている。
公取委は2021年にもニュースメディアと配信プラットフォーム事業者間の取引について取引条件の明確化が望ましいとする声明を出していたものの、実態の改善が見られなかったことから調査に踏み切ったという。今後は各事業者による取引の公正性・透明性を高めるのに必要な検討を行う方針を示している。
調査は2022年11月16日から12月7日にかけて実施。新聞社・通信社・出版社など220事業者から回答を集めた。
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