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Yahoo!動画とGyaO統合、「権利者を尊重する」No.1動画配信プラットフォームに

» 2009年04月07日 20時35分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 ヤフーの井上社長(左)とUSENの宇野社長

 「著作権者を尊重する、圧倒的ナンバーワン動画配信プラットフォームを作る」――ヤフーは4月7日、USENの100%子会社GyaOの発行済み株式の51%を5億2900万円で取得し、子会社化すると発表した(ヤフーがGyaOを子会社化 Yahoo!動画と統合へ)。

 動画配信サービス「Yahoo!動画」と「GyaO」を統合し、日本最大級の「著作権処理された動画のみを配信する」プラットフォームを構築する狙いだ。両サービスとも収益面では厳しい状況が続くが、統合によるユーザー数拡大とコスト削減で黒字化を目指す。

 国内の動画配信サイトは、「YouTube」「ニコニコ動画」といった投稿型が圧倒的な支持を受けている。だが「投稿サイトには、不正なコンテンツが散見される」とヤフーの井上雅博社長は指摘。正規に著作権処理した巨大な動画配信プラットフォームを構築することで、「権利者がきちんとビジネスできる場を提供したい」と意気込む。

GyaOもYahoo!動画も「もうかっていない」が……

 GyaOは2200万の登録ユーザーをかかえ、アクティブユーザーも650万人いるという。だが2005年4月のサービス開始以来赤字続き。同事業は2007年8月期に約20億円の営業赤字、08年8月期も約27億円の営業赤字になっている。

 赤字の背景についてUSENの宇野康秀社長は、「広告商品の完成度などに問題があった」ことや、「サービス開始当初には想定し得なかった、著作権処理が行われていない動画配信サイトがもろもろ出てきた。正規に著作権処理を行うわれわれとコスト構造に差が出た」ことを挙げる。

 USENは昨年10月にGyaOを分社化。同時期にUSENからヤフーに対して「パートナーシップ構築を提案」したという。

 「井上社長からは、動画サービスの規格統一の提案も受けていた。GyaOを強化するには、規格統一だけでなく、ヤフーと統合することが最善と考えた。ヤフーはサイトの収益化についての見識をお持ちだろう」と宇野社長は期待を寄せる。

 だがヤフー側も、動画ビジネスは厳しい状況だ。「Yahoo!動画」のほか「Yahoo!ニュース」「Yahoo!ミュージック」などで動画配信を行っており、合計の月間ユーザー数は1100万人を超えるが、「動画はもうかっているとは言い難い」と井上社長は認める。

統合で黒字化、権利者に対価を支払うスキーム確立を

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 Yahoo!動画とGyaOの統合でユーザー数拡大を見込む上、システムやインフラ、人員などを統合して「コストを半減させる」(井上社長)計画だ。決済や広告、会員向けサービス基盤なども統合し、巨大な動画プラットフォームを構築。テレビ局や広告代理店、映画配給会社などとも協力し、映像配信ビジネス拡大を目指す。

 「両サイトのプラットフォームを統合すれば、大きな市場ができる」(井上社長)――統合プラットフォームには、動画の有料・無料配信や、広告配信システム、著作権保護機能など「権利者のあらゆる要望に応えられる」機能を盛り込み、「権利者に対価を支払うスキーム確立を目指したい」と井上社長は意気込む。当初は両サービスを独立させて続けるが、1年後をめどに統合していく。

 完成したプラットフォームは、Webサイト運営者などに開放していく計画。「自前で動画配信プラットフォームを作るより、うちのプラットフォームを使ってもらった方が早くて安く、課金や広告配信もできますよ、と提案できるようにしたい」(井上社長)

権利を尊重した上で、動画サービス広げたい

画像 動画投稿サイトのユーザー数は、Yahoo!動画やGyaOユーザーを上回る

 国内の動画サイトはYouTubeやニコニコ動画のような投稿型が人気だ。井上社長は投稿サイトについて、「自分で撮った動画を投稿するのならOKだが、テレビ番組やDVDをそのままアップされてしまうと、コンテンツの作り手に収益配分されず、次のコンテンツ制作ができなくなる懸念がある」と問題点を指摘する。

 「権利者を尊重した上で動画が広がるサービス場を作らないと事業が続かない、という強い思いが、わたしにも宇野さんにもある」(井上社長)。統合新サイトでは、従来のYahoo!動画やGyaOと同様、著作権処理済みの動画のみを配信し、投稿サイトとは一線を画す。

 井上社長は、投稿型が流行した原因の1つとして、「権利処理した動画サイトに十分なコンテンツと利用者が育っていなかったこと」を挙げ、統合新サイトにコンテンツやユーザーが集まれば、「ユーザーも違法動画を見る必要がなくなるのでは」と期待を述べた。

 今回統合するのは、PC向けのGyaOとヤフーの動画サービスのみで、テレビ向け配信「GyaO NEXT」はUSEN本体に残す。今後の「GyaO」ブランドについては未定だが、「ブランドは大事にしたらいいのではと考えている」と井上社長は話していた。

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