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鼻歌で演奏する「ウルトラライトサックス」、その仕組みと狙い

» 2023年10月17日 22時35分 公開
[ITmedia]

 ソニーは幕張メッセで開催中の「CEATEC JAPAN 2023」で、鼻歌を歌うだけで誰でも奏でられるサックス「ウルトラライトサックス」を出品した。誰でも簡単に演奏できる「ゆる楽器」だという。

鼻歌を歌うだけで誰でも奏でられるサックス「ウルトラライトサックス」(公式動画より)

 ウルトラライトサックスでは、複雑なキー操作やテクニックは一切必要ない。それどころか、強く息を吹き込んだり、楽器を指で押さえたりする必要すらない。必要なのは鼻歌だけ。老若男女誰でも演奏できるという。

 サックスの形状をした本体には、マイクやスピーカーの他、ソニーのボードコンピュータ「Spresense」(スプレッセンス)を搭載している。マイクが拾った鼻歌からリアルタイムに音程を検出し、それをサックスの音に変換する仕組みだ。

 Spresenseは、電池で駆動する低消費電力でありながら、GPS受信機能やマイク入力、ハイレゾリューションオーディオコーデック、ClassDアンプなどを搭載。主に監視カメラやドローン、スマートスピーカーなどIoT用途を想定していたが、それに「ゆる楽器」が加わった。

ウルトラライトサックスの構造

 ソニーはゆる楽器のさらなる拡大を目指し、楽器向けにSpresenseの拡張基板を作った。ライブラリなどの提供もあわせ、「誰でも簡単に楽器を作れるキット」として今後提供する考え。「ゆるコア」と名付けた。

ウルトラライトサックスの仕組み

「ゆるスポーツ」の団体が楽器に取り組んだ

 ゆる楽器を提唱しているのは「世界ゆるミュージック協会」。年齢や性別、運動神経にかかわらず誰でも楽しめる「ゆるスポーツ」を70以上も開発したクリエイター集団「世界ゆるスポーツ協会」が母体となり、その知見を楽器にも生かそうと2019年に設立した。

 協会の代表を務めるのは、「あなたが生まれなければ、この世に生まれなかったものがある。」(アミューズメントメディア総合学院)などのコピーを手がけたコピーライターの澤田智洋さん。協会の活動に共感、協力する企業も多く、これまでに様々な企業と新しいスポーツと楽器を生み出してきた。

20年に発表した「ANDCHESTRA」(アンドケストラ)は視線の向きによって音を鳴らすAI楽器。NECのAI技術を採用している
最新のゆる楽器「電車ベース」は、ネックを線路に見立て、電車を動かすことで音程をコントロール。発達障害のある子ども向けの音楽教室を展開する人と音色社と共同開発した

 ソニーグループはアクセシビリティ(機器を容易に利用できること)の取り組みの一環として参加した。中でも音楽を扱うソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は積極的で、ゆる楽器の開発の他、ゆる楽器によるコンサートや教育プログラム、ハッカソンなども主催している。

「私なんて才能がないからとか、騒音が気になるとか、楽器を“自分のせい”にしてできていないということも多いと思うが、(われわれは)“難しく見せている楽器が悪い”という逆転の発想のもと、誰でも演奏できて、誰でも楽しく合奏できる“ゆる楽器”を開発している」(SME)──鼻歌で演奏するサックスには、そんな思いが込められていた。

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