Studioでホットスワップを採用した理由としてPFUはカスタマイズ性を挙げる。HHKBはこれまでエンジニアなどを中心に愛されてきたが、近年はユーザー層が広くなったことでキータッチの好みが多様化。それと並行してキーボードをカスタムする文化が育ってきており(特に米国など)、「Cherry MX」準拠のキースイッチ市場が確立。自分の好みにあったキーに入れ替えることが定着してきているという。この両面から「自身の手に馴染むよう仕事道具をカスタムする」という要素を取り入れるべく、ホットスワップに対応した。
そしてキースイッチにリニアタイプを採用した理由だが、企画担当者によると「あくまでも打鍵感にこだわったため」という。「クリエイターやプログラマーの人たちは、たくさん考えながら手を止めずにタイプしたい。そのために徹底的にノイズを排除し、打鍵感もとても静かなものを選んだ」としており、あくまで打鍵感でチョイスしたとしている。
とはいえ静電容量タイプが選択肢になかったわけではない。静電容量無接点スイッチをホットスワップ化することはできたのかという問いに担当者は「東プレさんではないが、ホットスワップ対応の静電容量タイプのものもある。技術的にできるかできないかでいえば、できる」「PFU=静電容量無接点で僕たちも育ってきたので、スタート地点ではそれも考えていた。しかし、メカニカルというジャンルの下に、無接点の静電容量やリニアスイッチ、タクタイルなど色々ある中で、シンプルに何が良いのかを選んだらリニアスイッチになった」という。ホットスワップ対応のもので最良を選んだ結果が今回のスイッチだったようだ。
既存のProfessional HYBRIDシリーズもリニアスイッチに移行する可能性はあるのだろうか。企画担当者は「そちらは守るべき伝統で、最高峰が2つあると思っている。タクタイル感のあるHHKB Professional、そしてStudioはクリエイターにも寄せた、思考を止めないための滑らかなリニアスイッチ。どちらが良いかは好み」と説明。方向性の異なる2つのトップラインがあるという考えだ。
もともとオリジナルのHHKBは、富士通高見沢製のメンブレンスイッチを採用していた。しかし2000年代に入ってこのスイッチが使えなくなり、代替として新たに採用したのが東プレの静電容量無接点方式のスイッチだったという。当時としては最良の選択肢だった静電容量スイッチだが、現在は品質がよく、かつさまざまなバリエーションのスイッチが登場するようになり「複数の選択肢から自分にあったものを選ぶ」が主流になってきた時代背景もあるのだろう。
展示されていたHHKB Studioを少し試すことができたが、HHKB Professional HYBRID Type-Sユーザー3年目の筆者から見ると、今回採用されたリニアスイッチは良く出来ているように感じた。まず静音性だがType-Sと同レベルか、より静かにタイプできる。そしてキーのストロークも非常にスムーズで、かすかにザラッとしているタクタイル味のある静電容量スイッチを、よりクリアにした感じだ。キー軸のブレも少なく、静電容量タイプかリニアタイプかはもう好みの問題だろう。
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