さらに、武蔵野大学では生成AIに対して、単なる学内チャットbot以上の用途を見出しているという。
武蔵野大学はもともと、2024年に控える創立100周年に向け、デジタル技術の活用を進める取り組み「Smart Intelligence Campus」を進めていた。取り組みには「メタバース上に新キャンパスを設立」などいくつかの目標があり、中には「学生などとの応対履歴を蓄積し、個人に最適化された『学修コンシェルジュ』を作る」というものもある。この学修コンシェルジュに、生成AIが役立つのでは、と考えているという。
ただ、実現に向けては課題も多い。一般的なチャットbotはユーザーの言葉に応じて言葉を返すが、武蔵野大学は問題を抱えた学生に自発的に話しかけ、助けになれるような仕組みを目指している。現状の生成AIのままでは、受け身の対応しかできない点が課題になる。
AIが最もらしいウソをつく「ハルシネーション」も問題だ。現在のヘルプデスク的な使い方であれば、影響はそこまで大きくない。しかし、例えば学修コンシェルジュが学生の進路指導を支援するとなると話は別だ。一つの間違いが、学生の人生を変えてしまう可能性もある。
そもそも、学修コンシェルジュの対応を学生ごとに最適化するには、学生のデータを収集・分析する基盤が必要だし、それを守るセキュリティやプライバシーの問題も考慮する必要がある。壁は多いが、まずはAIチャットbotを実際に提供することで知見を蓄え、学修コンシェルジュ実現の足掛かりにしたいという。
「画一的な教育からパーソナライズされた教育への移行は、今まで大学ではできなかった。コンシェルジュを一人一人の興味関心や能力、目標に合わせたサービスにしたいと考えている。それだけでなく、教員から学生への教授法、教育も、同様に個人に合わせたものにしたい」(森さん)
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