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なぜ? 突如浮上した「NTT法」見直しを巡る、NTTと通信3社の対立 その理由を整理する(3/5 ページ)

» 2023年11月13日 18時00分 公開
[佐野正弘ITmedia]

競合はNTT法廃止に「断固反対」

 それら見直しが進むことで、NTT法は役割を終えることから必然的に廃止される……というのがNTT側の見解である。だがそうしたNTTの姿勢に猛反発しているのが、KDDIやソフトバンク、楽天モバイルといった競合の通信事業者や、ケーブルテレビなどの地域通信事業者、一部自治体など180者。これら180者は2023年10月19日、NTT法の廃止に反対する要望書を自民党や総務省に提出している。

KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルら競合3社は、NTTの会見と同じ2023年10月19日の同時刻に会見を実施。180者の代表としてNTT法の廃止に反対する姿勢を示している

 反発する理由はNTT、ひいてはNTT東西が“特別な資産”を持つためだ。NTT東西が持つ公社時代に整備したインフラの多くは、いわば“国のお金”で整備されたもの。競合らの説明によると、各省庁のWebサイトなどから算出した設備投資額は25兆円、現在の貨幣価値では40兆円に上るとのことで、民間企業には構築が難しい規模だという。

NTTグループは公社時代に整備した土地や局舎、電柱などさまざまなインフラ設備を全国に保有しており、その額は現在の貨幣価値に換算して40兆円に上るとのこと

 それだけ圧倒的な資産を持つにもかかわらず、なし崩し的にNTT法が廃止されてしまえばNTTに対する規制がなくなり、非常に多くの問題が起きるというのがNTT法の廃止に反対する理由となっている。中でも競合が最も懸念しているのは、NTTグループの再統合であろう。

 元国営のNTTは事業規模が非常に規模が大きかったことから、通信市場競争加速のため政府が分離・分割を進めた経緯がある。実際1988年にNTTデータ、1992年にNTTドコモを分社化しており、1999年にはNTT自体が現在のNTTとNTT東西、そしてNTTコミュニケーションズの4社に分割されている。それゆえNTT法にもNTT東西の業務範囲やNTTグループの合併認可に関する規定が盛り込まれており、自由に再統合統合できないようになっている。

巨大だったNTTは民営化後、通信市場の競争を促進したい政府によって分離・分割が進められており、NTT法によって合併には総務大臣の認可が必要であるなど再統合には一定の規制が設けられている

 だがNTTは2020年、電気通信事業法の禁止規定がないことなどを理由に、突如何の議論もなくNTTドコモの完全子会社化を打ち出した。

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