突然浮上した、「NTT法」を巡る日本電信電話(NTT)と競合との激しい対立。NTT側が研究開発の開示義務やユニバーサルサービスの見直しなどによってNTT法の役割は終えるとする一方、KDDIやソフトバンクなど競合側は、NTTが“特別な資産”を持つ以上NTT法は維持すべきと主張、議論は平行線をたどっている。なぜ今NTT法の見直しが起きていて、NTT側と競合がそこまで対立する理由はどこにあるのかを確認したい。
そもそもNTT法とは「日本電信電話株式会社等に関する法律」の略称で、名前の通りNTTの在り方を定める法律だ。なぜそのような法律が存在するのかというと、NTTの前身が「日本電信電話公社」(電電公社)、要は国営の企業であったことに起因している。
電電公社がNTTとして民営化されたのは1985年のことだが、直前まで日本の通信市場を独占していたのに加え、通信という国の重要なインフラを持つ企業でもあることから、現在も総務省が管轄する特殊法人と位置付けられている。それゆえNTTは民営化当初から法律でその在り方が定められており、NTTグループの変化に応じていくつか変更が加えられてはいるものの、40年以上前に定められた法律が現在のNTT法の基礎となっていることに変わりはない。
そのNTT法の見直し論が2023年に突如浮上したのは、実は通信とは全く関係のない理由からである。日本政府が2023年からの5年間で防衛費を43兆円程度とする閣議決定をしたのだが、増税などで国民負担を増やすことなくその財源を確保する手段として、政府が保有するNTTの株式を売却する案が浮上したのだ。
NTTの最大の株主は「政府および地方公共団体」であり、2023年6月30日時点で32.29%の株式を保有している。それを売却して防衛費の財源に当てようというのが政府の狙いなのだが、NTTは特殊法人でありNTT法によって国が3割以上の株式を保有することが求められている。そこで政府がNTT株を売却するため、NTT法の見直しをするに至った訳だ。
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