「見えないWeb攻撃」──情報漏えい対策の盲点
「APIエコノミー」に迫る“検知できない脆弱性攻撃”の脅威(1/4 ページ)
いまやWeb API (Application Programming Interface) は、さまざな情報へのアクセスだけでなく、買い物や資産管理、AIを含む情報処理や、自動運転、IoTなどの機器制御にも利用され、現代社会を形作るキーテクノロジーとなっている。「APIエコノミー」という言葉の普及がその証左だ。
反面、APIは個人情報や機密情報の窃取や、アカウントの乗っ取りなどサイバー攻撃の格好の標的になっている。APIへの攻撃では、認証・認可の脆弱性が特に狙われる傾向がある。
実はこの種の攻撃が行われると、Web Application Firewall (WAF)などの既存のセキュリティで検知や防御ができないという思わぬ落とし穴がある。今回は、APIを狙う ”見えない攻撃” のリスクを実例をもとに検証してみよう。
連載:「見えないWeb攻撃」──情報漏えい対策の盲点
コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)サービスを基盤に、各種のクラウド型セキュリティサービスを手掛けるアカマイ・テクノロジーズでWebセキュリティの動向を追う中西一博氏が、非常に発見が難しくなっているWeb攻撃の実態と手口を暴き、その対策について解説する。
以前の連載:迷惑bot事件簿
アプリのマイクロサービス化とAPIの関係
世界中のWeb通信を中継しているAkamai Technologies (以下 Akamai)が取り扱う通信の8割以上は、すでにAPIの通信が占めている。
APIを利用するスマートフォンやブラウザアプリが普及の後押しをしているのは間違いないが、近年ではサーバ側のマイクロサービス化(あるシステムを小規模なシステムを組み合わせて開発する手法)の影響も大きい。
日本も同様だ。商用のWebアプリケーション開発者に話を聞くと「いま開発中のWebアプリやスマホアプリのサーバサイドは、全てマイクロサービス化を前提に設計している」という答えがどこからも返ってきて、Webアプリケーションの構造が大きく変革していることを実感する。
マイクロモジュール化されたサービスの間の情報や指示のやりとりを繋いでいるのがAPIだ。従来の一体化された(モノリシックな)ソフトウェアでは内部に閉じていたやりとりがネットワーク上に流れるので、アプリケーションの構造解析や、やりとりされるデータを狙った攻撃の標的になりやすい。米Salt Securityは2022年12月の調査で、API攻撃を行なった攻撃元の数が、6カ月前と比べて400%増加したと報告している。
API特有の検知できない脆弱性攻撃とは?
こうしたAPIを狙う攻撃には、WAFやAPI-Gatewayなどの従来のWebセキュリティソリューションでは検知できない手法が少なからず存在する。
実際、Webセキュリティの知見を提供するコミュニティー「OWASP」がまとめたWeb APIのセキュリティリスクランキング「API Security Top10」では、認証と認可に関わる脅威が上位を占めている。
1位の「オブジェクトレベルの認可の不備(BOLA)」は、本来アクセス許可がされるべきではないオブジェクトへ攻撃者がアクセスできてしまう脆弱性だ。API認証、認可を伴うアプリの開発で最もよく起きやすい。ここでいう「オブジェクト」は、さまざまなデータだけではなく、計算や機器の制御など、なんらかの処理の実行指示も含む。
上記の図は「システムがユーザーやデバイスの識別のために与える “ユニークID” (UUID) を、APIリクエストの中で不正に操作することで、他人になりすまして認可を突破する」 という、BOLAの脆弱性を利用する攻撃の基本的な仕組みを示したものだ。
BOLAは、さまざまなサービスが独自のAPIを備える上でのシステム設計や仕様上の見落とし、開発や実装上の考慮不足などが原因で起きる。一見単純に見えるが、実際の発生パターンは多岐にわたる。そこで、BOLAの実例を2つ取り上げてみよう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「見えないWeb攻撃」──情報漏えい対策の盲点
さまざまなWebサービスが、巧妙に隠された「見えないWeb攻撃」に狙われている。個人情報漏えいや犯罪行為を引き起こしている攻撃の実態を、独自のデータを交えて分析する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
Anthropic、自己複製AIの「兆し」を指摘 55ドルのTVボックス15台で26Bモデルが稼働
-
2
フランスのスーパー数百店舗で冷蔵設備にサイバー攻撃 温度が最高50度に上昇し食品大量廃棄に
-
3
相次ぐ情報漏えいの一因に「A2B攻撃」 公開アプリを解析し裏側のサーバを狙う手口、NICTが公表
-
4
国産AI「Sarashina」が無料で試せるWebサイト、ソフトバンク子会社が公開 6つのAIモデルが呼び出せるAPIも
-
5
キャッシュレスサービス「IDARE」、約13万人の個人情報漏えい 残高や取引履歴なども
-
6
JR東・京急・東武など鉄道7社、「磁気乗車券」廃止へ 27年春から「QR乗車券」に
-
7
PayPay証券、障害で日本株・ETFが売買できず 14日の予約注文も受付止まる 復旧めど立たず
-
8
「銀のさら」など、最大650万件の個人情報漏えいの恐れ アプリ注文も停止中 委託先サーバがランサム被害に
-
9
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
10
AIが出力した「実在しない判例」を書籍に掲載→回収・絶版へ 琉球大教授が謝罪「研究者としてあるまじき失態」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR