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英の大規模冤罪事件で富士通が下院証言へ 会計システム欠陥で700人以上が不当起訴

» 2024年01月11日 14時08分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 【ロンドン=黒瀬悦成】スナク英首相は1月10日(現地時間)、富士通の郵便事業者向けの会計ソフトの欠陥で郵便局長ら700人以上が詐欺や横領の罪で起訴された英国史上最大規模の冤罪事件で、冤罪被害者らの容疑を晴らして補償金を支払う救済法案を提出すると発表した。下院のビジネス貿易特別委員会は9日、富士通幹部に対して16日に証言するよう要請するなど、英政界では富士通の責任を追及し、賠償を求める声が出ている。

 英BBC放送などによると、郵便局の事業会社は1999年、富士通の英子会社が開発した会計ソフト「ホライゾン」を全英の支店などに導入した。ところが、会計記録と残高が一致しない事例が続出し、99〜2015年に郵便局長ら計736人が横領などを疑われて起訴された。一部は実刑判決を受けたほか、不足額の弁済を強いられて破産した者も出たという。

 しかし19年、郵便局長ら555人が起こした集団訴訟で裁判所がシステムの欠陥を認定し、英政府から補償金として総額約1億2000万ポンド(約229億3300万円)が支払われた。

 ただ、被害に見合った補償は進んでいない他、有罪となった数百人のうち判決が取り消されたのは一部にとどまっている。

 スナク氏は10日、新法案では被害者に1人あたり7万5000ポンドの補償金を支払うと表明。財源についてホリンレーク郵政担当相は「富士通の責任が明確になれば富士通に負担させる」との見通しを明らかにした。

 BBCによれば、富士通は13年以降も英歳入関税庁や国防省、内務省などと総額37億ポンド以上の納入契約を結んでいる。郵便局も23年11月、同社とのシステム使用契約を25年まで延長したとされ、英国内では富士通を政府調達から排除すべきとの声も出ている。

 富士通は10日、産経新聞の取材に、16日の下院証言に応じることを明言した上で「調査に全面的に協力する」とコメントした。

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