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「互換バッテリー」とどう付き合っていくべきか小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)

» 2024年02月01日 18時30分 公開
[小寺信良ITmedia]

「マキタ互換」電動工具の世界

 筆者は山林を所有しており、定期的に管理する必要がある。変なところに竹が生えてくれば伐採しなければならないし、道がなくなるほど雑草が生い茂れば草刈りしなければならない。

 そうした用途に役に立つのが、格安の電動チェーンソーや電動草刈り機である。それらにはほとんどのケースで、「マキタ互換バッテリー」が付属してくる。これももはや、電動工具用のバッテリーインタフェースとしてユニバーサル化してしまっているという事だろう。

 マキタバッテリーは、メーカー純正品も現行品として流通しているが、そういう意味ではソニーNP-970も23年までは販売していたので、事情は同じである。さらにマキタ純正も同インタフェースを持つバッテリーが9モデルもあり、非常に多様化している。

 こうした互換バッテリーが含まれる製品には、専用充電器が付属している。それを使って充電してくださいね、それ以外は動作保証しませんよとマニュアルに書いてある。それはそうだろう。

 この「それ以外の充電器」には、「マキタ純正充電器」も含まれると考えるべきだろう。中身のセルや制御基板が違えば、充電電圧が同じとは限らない。マキタ互換バッテリーが燃えたという写真を見てモヤッとしたのは、それはその互換バッテリーが想定していない純正充電器に突っ込んだからではないのか、という懸念が払拭できないからだ。

マキタ純正充電器の仕様表。大容量バッテリーを急速充電するために12Aもの電流が流れるという

 もっとも、バッテリー側に電圧検知や温度検知機能があり、過大電圧がかかったら充電を止めるといった処理が行われて当然だろう、という主張は分かる。だがその前にまず、互換バッテリー付属の充電器の存在を無視して、過大電圧をかけるなよという理屈も当然ではないのか。

 つまり電動工具における互換バッテリーの「互換」とは、インタフェースが互換なだけで、バッテリー性能事態が同じではないのは自明の理というか、見りゃ分かるだろこんな安いのが同じなわけねえじゃん的な話ではないのか。充電・放電があらゆる使用条件で、純正品同様のパフォーマンスがあると解釈するのはそもそも違うんじゃないのか。

 互換バッテリーを使う製品は排除せよ、とはなかなか言いにくい。そうしてしまうと、消費者としてはコストや性能面で商品の選択肢が非常に狭くなってしまう。実際多くのメディアやECサイトでは、「お勧め互換パッテリー10選」みたいな特集記事まで作っており、そういう責任はどうなんだ、という話にもなる。ある意味互換バッテリーとそれを採用する一連の製品群とは、うまく付き合っていかなければ仕方がないという現実がある。

 1ついえることがあるとすれば、発火事故は充電時のほうが大事になりやすいという事だ。機器の使用中、つまり放電中は人がそばについているので、問題があっても発見しやすい。

 一方充電時は、ずっと人がそばに付いている必要がないので、充電しておいてその場を離れる事の方が多いはずだ。そんなときに発火すると発見するまでに時間がかかるため、ボヤや火事などの大事になりやすいという図式は成り立つ。充電時は、互換バッテリーに付属の充電器を使って、人がそばに付いているというのが望ましい。

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