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女性IT人材が集まる「クラウド女子会」 活動内容は? 運営メンバーに聞く

» 2024年01月26日 13時53分 公開
[吉川大貴ITmedia]

 AWSのユーザーコミュニティーの一つである「クラウド女子会」。前編では「サービスを美少年化」「コスプレで勉強会」など、創設期の奇抜な活動内容を聞いた。しかし運営メンバーの入れ替わりや、コロナ禍の到来もあって、さまざまな変化が起きているという。

photo 多田歩美さん

 クラウド女子会の“今の姿”はどうなっているのか。後編では、当初の運営メンバーから役割を引き継いだ多田歩美さん(本田技研工業)、その後で運営メンバーに加わった小寺加奈子さん(アイディーエス)、五味なぎささん(日鉄ソリューションズ)、長濱志保さん(ビッグツリーテクノロジー&コンサルティング)に話を聞く。

クラウド女子会、いまの姿 コロナ禍から再出発

 まず、クラウド女子会が現在どんな状態にあるのか整理しておく。多田さんが前任の小室文さんから運営を引き継いだのが2015年ごろ。そこから18年までは、以前と同様新しいメンバーを引き入れながらの運営が続いたという。

 しかし多田さんが結婚したり、他のメンバーにもライフスタイルの変化があったりした影響で、2019年は活動ができない状態に。さらにコロナ禍がたたみかけ、2020年も動きが止まっていた。

 2021年にはオンライン主体で活動を一時再開したものの、クラウド女子会本来の目的が果たしにくく「オンラインでは難しい」という結論になった。勉強会としては成立するものの、IT業界の女性同士が横のつながりを持つ場として機能させることが叶わなかったという。

 「クラウド女子会は、単なる技術勉強会というより、キャリアの悩みなどについてちょっとした雑談をできることの方が重要だった。メンバーが打ち解けていく感覚の方を大事にしたいと思っており、オンラインが合わなかった」(多田さん)

 そのため2022年もしばらく動きがなかったが、コロナ禍の落ち着きに合わせて2023年1月から改めて活動を再開。以後、オフラインでの集まりを前提として定期的にイベントを開催している。例えば2023年末にはAIアシスタント「Amazon Q」の勉強会をしたという。

変わらない点・変わる点 地方在住の人も意識

 多田さんによれば、2023年に活動を再開して以降、積極的に参加しているのは、運営メンバー含めて30人程度。参加者はシステム開発事業者に勤めるエンジニアが多いものの、中にはデザイナーや営業職、ユーザー企業の人もいるという。

photo クラウド女子会の公式ページ

 創設期に比べると少し規模は落ち着いているものの「あまり大規模にやってもお互いの顔が見えない。それよりは、こじんまりとしていても、みんなと話ができるような場にしたい」(多田さん)という。

 ちなみに、前編で紹介した、推薦があれば男性でも参加できる仕組み「エスコート制度」も健在だ。最近の勉強会では、同僚を連れてくる人がいた他、家族を連れてきて、自分が勉強会を受けている間、子供の世話をしてもらっていた人もいたという。

photo 小寺加奈子さん

 一方でコロナ禍以降は、創設期とは趣きの異なる取り組みもしていると多田さん。最たるものが地方を意識したイベントだ。「運営メンバーは関東近辺に住んでいる人が多いが、地方在住の人からも参加したいというリクエストが多い」(小寺さん)として、2023年3月には東北を拠点とするAWSユーザーコミュニティーと、仙台市でイベントを共催。イベントはオンラインからも参加可能なハイブリッド形式にした。

 さらに8月には長崎県・佐賀県のコミュニティーとも、同様の形式でイベントを共催した。2024年は北海道でも同様の試みを検討しているという。

女性のキャリアに向き合う メンバーの思いは

 一度は休止状態だったものの、新しい取り組みに挑戦するなど再出発しているクラウド女子会。現在の運営方針については「女性にキャリア問題は常につきまとう。女性エンジニアのつながりを増やし、キャリア支援をしていくという大きな目標に向け、チャレンジしていく精神は残っている」と多田さん。

 コロナ禍から復活した直後ということもあって、前編で紹介したような奇抜な取り組みはないが、その存在意義は継いでいきたいという。最後に、運営メンバー一同にクラウド女子会への思いを聞いた。

photo 五味なぎささん

 「クラウドの知識だけでなく、仕事の仕方やキャリアなど広い知識が得られるのが自分にとって貴重。AWSの新しいサービスを見ていくことをきっかけに、今までになかった企画もまたやっていければ」(小寺さん)

 「少人数で女性だけということもあってクラウド女子会に参加したが、それを機に勉強会に参加するハードルがすごく下がり、結果として交流の輪を広げることができた。これから参加する人にも同じ思いをしてもらえる場にしていきたい」(五味さん)

photo 長濱志保さん

 「自分も、クラウド女子会に参加することでさまざまなつながりを持つことができた。同じように、他の人と他の人とつなげられる居場所にしていきたい」(長濱さん)

 「楽しくなかったら意味がないので『まず自分が楽しむこと』というベースは引き継いでいる。きっかけはAWSだが、あまりAWSにもとらわれすぎず、みんなが好きなことをやっていければ」(多田さん)


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