財務省が2月8日発表した2023年の国際収支速報で、経常収支は20兆円を超える黒字の高水準だった。「経常黒字は円高要因」が定説だったが、日本は2022年来、歴史的な円安に直面する。その主因は日米の金融政策の方向性の違いからくる金利差拡大にある。ただ、経常黒字の中身を分解すると、巨大ITの隆盛など、新たな円安要因の姿が見えてくる。
経常黒字に最も寄与したのは、海外との利子や配当金のやり取りを示す第1次所得収支で、その黒字額は34.5兆円と過去最大を記録した。日本企業が安定収益を求めて海外展開を積極化してきたためだ。
ただ、このうち3分の2以上を占める再投資収益や配当金、債券利子はドルから円に戻されることなく、海外で再び投資に回される傾向にある。
みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストの試算によると、5年の経常収支は受け取ったり支払ったりするお金の流れを加味すると、約1.8兆円の赤字。前年よりも赤字幅は縮小したが、これらの投資収益は投資残高が増えるほど多くの配当が見込めるため、第1次所得の多くが円に戻りにくい構造は今後も維持されやすいと考えるのが自然だ。
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