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ウクライナ侵攻で手足失った人に義手・義足を 日本企業、3Dプリンタ使用で安価

» 2024年02月19日 16時24分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 ロシアがウクライナに軍事侵攻してから、2月24日で2年となるが、ウクライナでは多くの人が手足を失っており、その数は1万人以上といわれる。現地では義手や義足だけでなく、リハビリや調整を行う専門技術を持った人も足りていないことが深刻な問題となっている。こうした状況を変えようと、日本のベンチャー企業や自治体が支援に乗り出している。

photo 開発した義手の説明をする販売担当のイホール・コスティブ氏=千葉市

 2023年に幕張メッセ(千葉市)で開かれた展示会で、日立製作所子会社のグローバルロジックとウクライナ企業が共同で開発した義手が紹介された。筋肉の電気信号によって指を動かす「筋電義手」で、慣れると物をつかんだり、靴ひもを結んだりできるようになる。

 筋電義手は最低でも半年の訓練が必要とされるが、AIが装着者の筋肉の動きを学習してサポートすることで、わずか数週間で扱えるようになるという。

 高性能な義手は1本数百万円するものも珍しくないが、3Dプリンタを使って義手の部品を出力することで製作にかかる時間とコストを削減し、8000ドル(約120万円)と安価に抑えた。将来的に日立が持つ技術を義手の開発・生産に生かすことも検討する。

 ウクライナでの販売を担当するイホール・コスティブ氏は「直近で100本の義手を生産できる計画だが、ウクライナでは義手を必要とする人が多く、数が全然足りていない」と話す。

 こうしたウクライナの現状を受け、日本企業や自治体が支援の動きを加速させている。義足を製造・販売するベンチャー、インスタリム(東京)は、ウクライナに100本の義足を届けようとクラウドファンディングを実施。目標金額を上回る771万5000円が集まった。

 同社の徳島泰CEOが23年にウクライナを訪れた際、爆撃に巻き込まれて足を失った人々の現状を知り、「自分たちにできることをやりたい」と支援を決めたという。

 一方、兵庫県は義手や義足のリハビリを担う人材の育成を支援しようと、ウクライナの医療従事者を県内の専門施設で受け入れる検討を進めている。神戸市にある県立総合リハビリテーションセンターは筋電義手に関して国内トップレベルの知見を有し、海外の医療従事者を研修で受け入れた経験もある。

 ウクライナでは義手や義足のリハビリができる専門家や作業療法士が少ないことが課題となっており、ノウハウを伝えることで復興支援につなげる考えだ。県は年内の受け入れを目指している。(桑島浩任)

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