モバイルバッテリーが普及し始めたのは、東日本大震災以降の事である。NTTモバイル者会研究所の調査によれば、震災のあった2011年はまだスマートフォンの普及率は20%程度であり、多くはガラケーでバッテリー交換が可能だった。またコンビニでは、9V角電池を使った充電器が売られていたものだった。
スマートフォンの所有が50%を超えたのは15年頃で、モバイルバッテリーの普及もそれと同時に急速に進んだものと思われる。筆者の記憶ともだいたい一致する。
モバイルバッテリーの普及からざっと10年。初期に買ったモバイルバッテリーは、充電できなくなったもの、膨張して使用不能になったものなど、すでに寿命を迎えたものも多いだろう。昨今では参入メーカーも増え、価格もかなり下がっている。粗悪なものが混じっている可能性も、高くなってきていると考えるべきだろう。
とはいえ、モバイルバッテリーの信頼性を消費者が見分けるのは難しい。ネットの評判であったり、レビューであったり、あるいは有名メーカー製であったりといったところをよりどころにするしかないのが実情だ。
1つの指針となるのは、PSEマークやリサイクルマークの表示だが、それが正規の表示であるのかもまた、消費者は見分けが付かない。ましてやEコマースサイトで購入する場合、マークの存在が確認できないケースもある。この点では、消費者保護が非常に弱いジャンルであるともいえる。
使用できなくなったモバイルバッテリーや、リチウムイオンバッテリー内蔵製品の廃棄も、問題を難しくしている要因の1つであろう。23年の11月、東京23区の粗大ごみ処理施設が火災で停止した。23区にお住まいのみなさんは、24年3月まで粗大ごみの廃棄を控えるよう、自治体等から呼びかけがあったはずだ。
この火災は、廃棄されたリチウムイオンバッテリーが原因といわれている。モバイルバッテリーそのものなら消費者も意識するだろうが、われわれの身の回りには、いわゆるモバイル製品があふれている。ざっと筆者の回りを見渡しても、ワイヤレスイヤフォンやBluetoothスピーカー、スマートウォッチ、ワイヤレスキーボード・マウス、充電式の電動歯ブラシやハンディ扇風機などなど、バッテリー内蔵の製品は多い。そもそもバッテリーを取り外すこともできないので、本体ごと廃棄することになるわけだが、これらの製品は普通には捨てられない。
可燃ごみとして捨てるのは論外としても、知識がなければ不燃ごみとして出すという事はあり得る。不燃ごみも収集車内で圧縮して搬送するケースもあり、その際に内蔵バッテリーがショートして出火するという事故も多数報告されている。
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