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万博で世界へ羽ばたく「金の卵」探しが活発化 スタートアップ後押しも見え隠れする閉幕後の課題(2/2 ページ)

» 2024年02月26日 19時41分 公開
[産経新聞]
産経新聞
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経済活性化に期待62%

 会場建設費や運営費の相次ぐ増額などで、批判をされることも多い万博だが、地元の企業や経済界は、経済浮上の起爆剤になるとして熱い視線を送っている。

 近畿経済産業局は、万博のテーマに沿った事業を展開している新興・中小企業を抽出し、見学可能な産業施設などとともに、それぞれの連絡先も併記してまとめた「360°EXPO拡張マップ」をインターネット上で公開。「自治体や事業者がマップを活用して各地に人を呼び込み、イベントや国際会議の開催につなげてほしい」としている。

 大阪シティ信用金庫が令和5年7月に大阪府内の取引先企業1370社から回答を得た聞き取り調査では、万博開催による地元経済の活性化について、62.6%が「期待できる」と回答した。

 万博に期待する項目としては、「公共・民間投資の増加」(53.1%)が最も多く、「インフラ整備」(50.7%)、「会場建設・整備・各種イベントなどに伴う受注増」(36.1%)、「国内外の観光客(インバウンド)の増加」(35.3%)、「大阪・関西の存在感の向上」(24.8%)と続いた(複数回答)。「万博への参加意向がある」とした企業は29.3%で、前年の同じ調査から5ポイント上昇した。

 ただ、万博開催が近づき、現実的な見方が増えている傾向もみられた。万博開催により、「自社の経営にプラスの影響がある」とした企業は57.7%で、前年調査から8.7ポイント減少。同信金は「企業が人手不足などの課題を抱え、万博の効果を十分に受けられない状況がうかがわれる」と分析した。

「東京一極集中」打破を

 大商や近畿経産局の取り組みは、万博が経済活動の面でも「東京一極集中」を打破するきっかけになるとの期待もある。

 日本総合研究所関西経済研究センターの藤山光雄副所長は「スタートアップの創出や立地が首都圏に集中し、関西ではそうした企業の育成や誘致が課題となっている」と指摘。万博が「未来社会の実験場」をコンセプトとしていることから、「スタートアップによる新たな取り組みや技術を紹介したり、体験してもらったりする場としてふさわしく、企業活動が盛り上がる期待が大きい」とする。

 さらに、藤山氏は「万博で生まれたきっかけが尻すぼみにならないよう、万博後も含めたネットワーク構築や金融・人材面でのサポートも必要」と強調。脚光を浴びた新興・中小企業が大阪・関西を拠点として成長することが望ましいとし、企業成長に伴う首都圏や海外への流出を防ぐため、行政も一体となって居住・ビジネス環境を向上させる必要があるとした。

 一方、関西では、新型コロナウイルス禍で金融支援が急拡大した反動に加え、資材価格高騰や円安の加速により、倒産件数が高水準で推移している現実がある。東京商工リサーチによると、23年度上半期の近畿の企業倒産は1080件(前年同期比35%増)で、コロナ禍前の水準に戻っている。

 同社情報部の瀧川雄一郎氏は「中小・零細企業を中心に倒産が増勢基調にあり、勢いのある企業が大阪・関西を盛り上げることで、万博後の景気回復に期待したい」と言及。大商などによる万博に向けた支援の枠組みから漏れた新興・中小についても、万博開催により健康・医療などの分野に関心を持つ大企業も増えることで、ビジネスマッチングなどの機会が増えるメリットがあるとした。(井上浩平)

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