ITmedia NEWS > セキュリティ >
セキュリティ・ホットトピックス

セキュリティー・クリアランス法案が審議入り 恣意的規制や不利益防止が焦点に

» 2024年03月19日 21時09分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 経済安全保障上の機密情報へのアクセスを官民の有資格者に限る「セキュリティー・クリアランス(SC、適格性評価)」制度を創設する「重要経済安保情報保護・活用法案」が3月19日、衆院本会議で審議入りした。岸田文雄首相が出席し、野党は恣意的な規制になりうるとの懸念や、制度により企業の従業員に不利益が生じる可能性をただした。今後の審議の焦点となる。

photo

 「安全保障の裾野が経済分野にも拡大する中、国家および国民の安全を経済面から確保することは喫緊の課題だ」。首相は本会議で、法案の意義を強調した。

 新制度では、漏えいすると国の安全保障に支障を与える恐れがある情報を「重要経済安保情報」に指定し、情報の取り扱いを有資格者に限定する。重要インフラやサプライチェーン(供給網)の脆弱性に関する情報などが対象となるが、機密の指定や解除などの具体的運用基準は法成立後に閣議決定される。

 質疑で野党からは「指定する範囲は真に守るべきものに限り、恣意的規制とならないようにすべきだ」といった指摘が出た。高市早苗経済安保担当相は「適切な内容を定めた上で、明確かつ丁寧に説明し、情報提供をしっかりと行っていく」と強調した。

 資格付与のための適格性評価の際には、企業が従業員の同意を得て提出した名簿をもとに、家族の国籍や犯罪歴、薬物の使用歴、精神疾患の有無などが調査される。法案には、適格性評価の結果や調査で得られた個人情報の目的外利用の禁止が明記されたが、罰則の規定はない。

 中小企業などでは事実上、調査への同意が強制されることや、評価の結果によって異動を強要されるなどの不利益を懸念する声も出ている。これに対し、首相は本会議で「禁止規定の順守を事業者との契約等でも求めるなど、実効性確保のための措置を講じていく」と理解を求めた。(長橋和之)

copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.