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鳥山明さん逝去に中国から悲しみの声が相次いだワケ なぜ「ドラゴンボール」はここまで浸透したのか(1/2 ページ)

» 2024年03月20日 16時00分 公開
[山谷剛史ITmedia]

 「当時は優れた漫画がわずかしかなく、ドラゴンボールは私たちの子供時代に一緒にいました。かけがえのない思い出です」

 「教科書やノートに写してました。同級生はかめはめ波をまねてたし、どちらが先に最新話まで読めたかでよくケンカしてました。ドラゴンボールは、笑い、情熱、強さ、悔しさ、感動など、私たちにたくさんのものを与えてくれました」

人民日報もコメント(左がオリジナル、右が翻訳したもの)

 鳥山明さんの悲報は本当に数多くの中国メディアが報じた。長く中国を見続けた筆者だが、特に多くの中国メディアが報じたと言っていい。後日8日には中国外交部の定例記者会見でテレビ東京の記者の質問に、報道官の毛寧氏が「彼の作品は中国で非常に人気で、多くの中国のネットユーザーが死を悼んでいました」と哀悼のコメントを行い、それが人民日報など権威ある国のメディアで更に広がった。漫画家の死去に外交部がコメントするのは見たことがないと中国でも驚かれた。

 報道を受け、ある人は当時の思い出と哀悼の意のコメントを書き、ある人は鳥山明さん風のイラストとコメントを書きこんだ。また商売っ気のある人もいるもので、中国のECサイトでは哀悼記念品を販売する動きも見られた。コンテンツはドラゴンボールがほぼ全てで、続いてアラレちゃんが少数あり、ドラゴンクエストなどのゲーム作品は(ニセファミコンで勝手に中国語化はされていたが)思い出話は確認できなかった。中国で鳥山明さんといえばドラゴンボールだ。

便乗商品も登場。値段は40元(800円超)

 特にドラゴンボールが人気となったのは、当初は孫悟空の名前などが西遊記を元ネタにしているのはもちろんのこと、武天老師といった名称や、随所に描かれた風景、それに中国映画などの中国要素が強くあり世界に入りやすかったのがあったと中国各メディアで紹介されている。「日本で中国文化をベースにした漫画が長期にわたって世界的なヒットとなったのが悲報で確認できた。孫悟空といえば中国ではなく日本だ。中国で逆に日本のキャラクターの冒険活劇でも描こうものなら反対世論も出るだろう。これについて考える必要があるのではないか」と一考を促す記事も。

 2000年代後半に入り、中国でブロードバンドとビリビリ動画などの動画サイトが普及したときには、ドラゴンボールは少々古いコンテンツ扱いで、当時の人気アニメコンテンツはONE PIECE、NARUTO -ナルト-、BLEACHにバトンタッチしていた。とはいえドラゴンボール全話が全シリーズ全話配信されていて、動画サイトで根気強く無印ドラゴンボールの第1話から最終話まで全話見た人も若い世代にはいる。ちなみに近年の動画サイトの動画は基本海賊版ではなく正規版であり、無料広告モデルで視聴できる。

 特に懐かしんだのはもう少し前の子供の頃にインターネット環境がなかった世代で、中国で「80后(1980年代生まれ。パーリンホウと呼ぶ)」「90后(1990年代生まれ。ジョーリンホウ)」と呼ばれる世代、つまり年齢では25歳から44歳の人々だ。彼らは口々にドラゴンボールを見て育ったと書いている。

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