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SNS型投資詐欺、滋賀で急増 「日本の縮図」個人投資ブームが背景

» 2024年04月04日 19時25分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 詐欺事件の発生が止まらない。特に交流サイト(SNS)から始まる投資名目の「SNS型投資詐欺」や恋愛感情を抱かせる「SNS型ロマンス詐欺」が急増。2024年に入って3カ月間の滋賀県内の被害件数は計72件、被害額は約4億1200万円。詐欺被害が過去最悪だった前年同期の6.5倍の件数で、被害額は約4倍にのぼった。新NISAなど個人投資ブームが背景にあり、同県警は「滋賀だけの問題ではなく、日本の縮図」と分析する。

 同県警の速報によると、24年1〜3月のオレオレ詐欺など特殊詐欺の件数は57件(前年同期70件)、被害額は約1億5400万円(同約4900万円)だった。23年下半期に急増し、特殊詐欺から別の類型の詐欺に位置付けられた「SNS型投資詐欺」と「SNS型ロマンス詐欺」は件数、被害額とも特殊詐欺を上回っていた。

photo 緊急に詐欺被害防止を訴える滋賀県警の中村彰宏本部長=3日、滋賀県警本部

ロマンス詐欺も

 被害の中にはにわかに信じられないケースも多い。

 23年1月20日、同県草津市内に住む無職の男性(62)がSNSで、女を騙(かた)る者と知り合った。

 LINEでやり取りする中で、「有名投資家の叔父から指導を受けて暗号資産を売買すればもうけることができる」などと投資話を持ちかけられた。指定口座に送金するとアプリ上で利益が出た。男性は信じ、3月14日までの間に計16回にわたって入金し、現金計約5700万円をだまし取られた。

 外国人などを名乗って恋愛感情を抱かせるロマンス詐欺も投資名目が多い。

 同県彦根市内に住む会社員の女性(23)は23年12月下旬、マッチングアプリで韓国人の男と騙る者と知り合い、LINEでやり取りする中で、「将来、一緒になりたい」「投資は実践的に教える」と暗号資産による投資話を持ちかけられた。送金すると利益が出たため、信じた女性が24年1月6日までの間に計5回にわたって計約450万円分の暗号資産を送金し、だまし取られた。

自分のことと考えず

 同県警が22年に特殊詐欺の被害に遭った132人から23年、聞き取り調査をしている。その結果、特殊詐欺について、「知っていた」と答えたのは100人(96%)だった。ただ、「自分が被害に遭った手口を知っていたか」には77人(77%)が「知らなかった」と答えた。

 一方、被害者52人を対象とした「自分が被害に遭う(騙(だま)される)かもしれないと思っていたか」の問いには、「騙されないと思っていた」が41人(79%)、「騙されるかもしれないと思っていた」は6人(11%)だった。さらに、未然に被害を防ぐための防犯対策については、「対策をしていなかった」が42人(81%)だった。

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 同県警生活安全企画課の坂井孝行課長補佐は、「特殊詐欺を自分のことと考えていない人が多いことがよくわかる」と分析する。

本部長が注意喚起

 「投資に絶対もうかるはありません」「誰もが被害に遭うという危機意識をもってほしい」

 4月3日、滋賀県警の中村彰宏本部長は会見で、県民に対して緊急の呼びかけをした。中村本部長は、YouTube滋賀県警公式チャンネルでも直接、被害防止を訴えている。

 では、被害に遭わないポイントは―。同県警は<ポリスポイント>として、「必ずもうかる」投資は、絶対にあり得ない、投資の広告や投資専用グループの誘いに乗らない、1人で判断せず、証券会社や金融機関などに確認を、の3点をあげる。

 「冷静に考えたら、あり得ない話が多い。ただ、犯人は本当に巧妙。誰もが騙される恐れがある」と坂井課長補佐は指摘する。

 「私は大丈夫」なんて思わず、「騙されるかもしれない」と謙虚に受け止め、詐欺の手口を知る。私たちが、特殊詐欺やSNS型投資詐欺、SNS型ロマンス詐欺の被害に遭わないためにできることは、これに尽きるだろう。(野瀬吉信)

photo SNS型投資詐欺の注意喚起をする滋賀県警のチラシ

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