ITmedia NEWS > 科学・テクノロジー >

授乳中に母親の“スマホいじり”は本当にダメなのか? 大量のカメラとセンサーで神戸大学などが分析ちょっと昔のInnovative Tech(2/2 ページ)

» 2024年04月12日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]
前のページへ 1|2       

被験者Cの場合

被験者Cの授乳体勢
被験者Cの乳児にみられた変化

 母親は最初、乳児を左手で抱きスマホは右手で操作していたが、途中で乳児を右手に抱き替えた。抱き替え後もスマホ操作は右手であった。母乳を飲まない変化は全てで起こったためスマホ操作とは無関係だが、足を動かす変化は(d)のみで観察されたためスマホ操作と関係ある可能性がある。乳児の変化直前の視線はさまざまであり、母親が乳児を見ていても乳児の変化は起こった。

被験者Dの場合

被験者Dの授乳体勢
被験者Dの乳児にみられた変化

 母親は実験中ずっと乳児を左手で抱き、スマホは右手で操作していた。被験者A、B、Cとは異なり、授乳のみの(a)の状態でも乳児の顔をあまり見ておらず、乳児に変化が起こると顔を向けていた。乳児は実験中ずっと母親の胸をたたく動作が多く見られた。声を上げる動作もスマホ操作の有無に関わらず起こっており、スマホ操作とは関係ないと考えられる。

 足を動かす変化はスマホ操作時にのみ見られた。足を動かす、スマホを触るという乳児の変化が起こる前、乳児は母親の顔を見ていることが多かった。その際、母親は乳児を見ておらず、これらの変化は視線に関係している可能性を示唆する。一方、母乳を飲まなかったのはスマホ操作をしていない(a)のときだけであった。

 今回の実験は、サンプル数が少ないことや、個人差が大きいことから、結果を一般化するには注意が必要である。また、実験方法にも改善の余地がある。

 今後は、母親の座る姿勢を統一し、各状態をより長く継続するなど、実験条件を整えた上で、サンプル数を増やして検証を重ねる必要がある。さらに、乳児の行動変化のうち、特に「母乳を飲まない」ことに着目し、授乳開始から母乳を飲まなくなるまでの時間、回数、合計時間などを授乳のみの状態とスマホ操作中の状態で比較評価することが提案されている。

Source and Image Credits: 中川 遼, 大西 鮎美, 吉田 さちね, 寺田 努, 塚本 昌彦. 授乳時における母親のスマートフォン操作と乳児のぐずりの関係調査利用統計. 情報処理学会 マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2018論文集.

英語論文:Haruka NAKAGAWA, Ayumi OHNISHI, Sachine YOSHIDA, Tsutomu TERADA, Hiromasa FUNATO, and Masahiko TSUKAMOTO, ``Effect of Using Smartphone during Breast-feeding,'' Proc. of the 2nd International Workshop on Computing for Well-being(WELLCOMP 2019), pp. 1190--1193, doi:10.1145/3341162.3344840(Sep. 2019).



前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.