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1日16時間没頭も──4年半の「ゲーム廃人」から起業 エンジニアの社長が語る逆転人生(1/2 ページ)

» 2024年06月11日 11時07分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 「ゲーム廃人」。昼夜を問わずゲームの世界に没頭し、社会生活から隔絶した状態の人を指す造語だ。VR技術や、法人向けのエンジニア研修などを取り扱うフィグニー(東京)で社長を務める里見恵介さん(41)は、文字通りゲーム廃人として約4年半を過ごした過去を持つ。

 一時は死も意識した状態を脱し、エンジニアとしての技術を習得した後に起業。「こういう経験(ゲーム廃人)をしたのであれば、それを強みに変えられるような生き方を見つけるしかなかった」。不安に満ちた日々から再起を図ることができたのは、「誰にも負けたくない」という信念があった。

photo 「バーチャル上で経済活動を活発化させて、人生に多様性をもたらせることが自分のミッション」という里見恵介さん=東京都内(浅野英介撮影)

「現実」の世界で襲った不安

 静岡県伊東市出身の里見さんの実家は、葬儀会社を経営。深夜に問い合わせの電話がかかってくることも日常茶飯事の環境の中で育った。「一人で自分の時間を過ごすことが多かった」と振り返るように、読書やテレビゲームで過ごすことが多い少年時代だった。

 高校卒業後は同志社大経済学部に進学。だが、里見さんは大学の授業にはほとんど出席せず、あるオンラインゲームに没頭した。2002年に発売された「ファイナルファンタジーXI」。ロールプレイングゲームとして「ドラゴンクエスト」と並ぶ、有名な人気シリーズだ。

 オンライン上の仲間とともにバーチャルの世界で過ごすことは、里見さんにとって自分の「居場所」だった。「会社みたいに仲間を作って目的を達成するプレーヤーや、会話を楽しむだけのプレーヤーもいた。自分にとっては社会の縮図のような世界だった。この世界で一番になりたいと思った」。一日にゲームに費やした時間は16時間以上になることも。食事は一日1食、入浴は数日に1回というような生活が、約4年半も続いた。

 バーチャルの世界では100人の仲間を束ねるリーダーとして、一目置かれる存在だった里見さん。しかし、いったん現実の世界に戻ると、自身の置かれている現状に猛烈な不安が襲ったという。

 「夜寝る前に『もう、死のうか』と思う時もあった。寝る前は毎日毎日、不安でたまらなかった」。結局、里見さんは05年に同志社大を中退し、いったん実家へ戻る決断を下した。

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