「うちは値上げを行わないことを決めています。これからも値上げやお客さまに不利なプラン変更をすることなく、長くご利用いただけるサービス作りに取り組んでいきます」──そう語るのは、クラウド請求書受取サービス「invox」(インボックス)を運営するinvoxの横井朗代表だ。
invoxは、企業間でやりとりされる請求書をデジタル化し、受け取りから支払いまでをクラウド上で一元管理できるSaaS。現在の導入企業数は2万社超という。特筆すべきは、invoxが「値上げを行わない」方針を明確に打ち出している点だ。
「5年間値上げはしていないし、これからもする気はありません」と横井代表は断言する。初期費用は0円、月額料金は980円、9800円、2万9800円の3プランで、請求書処理量に応じた従量課金が加わる仕組みだ。この料金体系を維持し続けるという。
一般的なSaaSビジネスでは、顧客数の増加とともに顧客単価を上げていくことが成長戦略の王道とされる。しかし、invoxはあえてその道を選ばない。なぜ、invoxはこのような異例の方針を掲げているのか。そして維持は可能なのか。横井代表は「より多くの人に使ってもらい、業務効率化の恩恵を広く行き渡らせたい」と話す。
invoxは一般的なSaaSビジネスモデルと異なり、低価格戦略を軸に顧客数の増加に注力している。「より多くの人に使ってもらい、業務効率化の恩恵を広く行き渡らせたい」と横井代表。この方針を実現するため、invoxは徹底的なコスト削減と効率化を図っている。
まず、invoxは創業時からフルリモートで運営している。「初めからフルリモートでコストをなるべく下げて、低価格でも黒字化できるように、いかに低コストで低価格で提供できるかというところを目指してきました」(横井代表)
マーケティングや営業にかける費用を最小限に抑えている点も特徴だ。「マーケティングにそんなにコストをかけていないので、知名度はだいぶ低いんです。でも、きちんと比較していただければ選んでもらえる」という。
invoxの戦略は、低価格を維持することで導入障壁を下げ、多くの企業に利用してもらうことだ。「(クライアントは)導入時にきちんと費用対効果を出して、このコストならペイするだろうと判断して導入を決めています。そこで後から値上げをすると、このコストだったら入れなかったのにという話になってしまう」
「日本の法人数は200万から300万といわれています。より多くの人に使っていただきたいと思うと、まだまだ1桁、2桁の成長の余地があります」と横井氏は市場の可能性を語る。
ただ、気になるのは値上げしない方針の持続性だ。若いスタートアップであれば、資金調達元であるベンチャーキャピタルからの突き上げがあり、結局値上げに走る──というシナリオも考えられる。しかし、invoxは少々事情が違う。
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