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電子コミックの源流は“PDA”から――「コミックシーモア」が歩んだ20年、朝日代表に聞く小寺信良のIT大作戦(4/4 ページ)

» 2024年10月09日 13時00分 公開
[小寺信良ITmedia]
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──一時期、というか今でも漫画村のような違法配信サイトは常に問題になるところですけど、違法対策としては隣接権を持ってる出版社は法律で戦えます。一方書店って、権利では戦えないんですよね。これ、書店なりの戦い方ってどういうスタイルになるんでしょうか

朝日:究極、違法配信サイトはゼロにはならないっていう原則論に立てば、これはもうどこまで行っても読み手のモラルの問題だったりするわけなんです。それはもう啓蒙していくしかないっていうところで、出版社を中心とした連合に私たちも参画していますけども、電子書店同士でも連合を作って、啓蒙活動を一緒にやらせていただいてるところです。

──コンテンツが魅力的で、あとは品ぞろえと入手のしやすさ、価格とか信頼度ですね、そういうところで悪貨を駆逐していくみたいな方法論かと思うんですけれども。そういった意味では、オリジナルコンテンツを持っていて権利者側になるっていうのも結構大事なポイントになってくるのかなと。御社はオリジナルコンテンツの開発とかクリエイター支援策は、どのようにやってらっしゃるんでしょうか

朝日:もともと以前からオリジナルコミックも持ってるんですけども、 最近注力してるのは、そのコミックシーモアが持つ多彩なデータ。ジャンルごとの売り上げの推移だとか、人気の作品等からのトレンドをつかみながら、お読みになれてるユーザーの性別、年齢などの相関を分析したり。あとはWeb広告の反応の良しあしなどから、どういった描写、シーンが読者を引きつきつけるのか、そういう分析結果を実際の作品作りに生かして、オリジナルコミックを作っています。

オリジナルコンテンツも積極的に開発

 クリエイター支援策としては、いわゆるコミケ、コミックマーケット等にはほぼブースを出して、持ち込みされた作品を1つでも多く拝見させていただいて。世の中に広めるべきものであればピックアップさせていただいて、シーモアコミックスから出していこうという取り組みをやらせていただいてます。

少女・女性マンガ部門では20位までの間にオリジナルコンテンツが3つもランクイン

──発表会のプレゼンテーションでもおっしゃってたんですけど、海外マーケットにも力を入れていますよね。日本のコンテンツを世界標準に合わせるんじゃなくて、「ネオガラパゴス」っていう、日本の中で熟成させていくんだという発想が、これまでコンテンツの海外進出っていう手法と違って非常に面白いこと考えられてるなっていう気がするんですよ。 逆に言うと、日本で濃く熟成させた方が、世界で戦えるというふうに見てらっしゃるってことですか

日本マンガは独自で多様性がある

朝日:そうですね。もちろん宗教的なこととかにはカルチャライゼーションしていかなきゃいけないと思うんですけど、基本的には日本で人気のマンガがそのまま海外でも人気が出るっていうのは、割とこれ相関がありまして。

2022年に米国市場へ進出

 ですので、基本的には国内で芽が出るもの、芽が出そうなものをいかに手早く海外にも広められるかっていう勝負かなっていうふうに思ってます。もちろん1つずつの国のマーケットが大きくなっていけば、その国独特の文化だとか宗教に合わせてコンテンツを作っていくっていう目線もあると思うんですけど、まだちょっとそこまでには至ってないですね。

 ただ海外は意外とまだ、紙文化なんです。

──そうなんですか!?

朝日:おそらく90%以上はまだコミックが紙で読まれてる可能性があるんですね。ですので、これからどのように電子コミック市場が育成されていくかっていうところが、1つ僕らがビジネスに関わっていけるかなっていうふうに見てますね。


 筆者は割とマンガは読む方なのだが、出版社が運営しているものはまあなんとなく分かるとして、多くの配信事業者が同じマンガを配信してなぜお互いが食い合わないのか、ビジネスがよく分かっていなかった。実際に話を伺って、書店という形でも逆流してコンテンツに関わっていけるというところが、市場のダイナミズムを産んでいるということがわかった。

 紙のマンガ文化を懐かしく思うこともあるが、1週読むチャンスを逃してしまうともう読めないというもどかしさから解放されたのは、電子コミック配信事業の活性化の恩恵だろう。

 日本が世界に誇れるオリジナルの文化の1つであるマンガは、ネオガラパゴス化した中でさらに成熟し、先鋭化していく。まさに現代を生きるわれわれは、その過程に立ち合っているところである。

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