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電子コミックの源流は“PDA”から――「コミックシーモア」が歩んだ20年、朝日代表に聞く小寺信良のIT大作戦(2/4 ページ)

» 2024年10月09日 13時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

ビジネスの転機となったスマホの台頭

──それがスマートフォン時代になって、やり方なり売り方といったセオリーが、ガラッと変わったわけでしょうか

朝日:まず、携帯からスマホに変わるっていうのは、 いわゆるキャリアプラットホームからオープンインターネットに変わるっていうことと多分同じだと思うんですよね。

 キャリアプラットフォームでは、 キャリアがユーザーさんを連れてきてくれるので、私たち書店が直接顧客に向かって営業することなかったわけですけども、オープンインターネットのスマホに変わったら、私たち自らが広告を打って集客をしなきゃいけなくなった。

 ただ一方で、非常にマンガの作り手が増えて、作り方にもバリエーションが増えました。例えば昔からのマンガってのは、編集者とマンガ家が二人三脚で作るものでしたが、その作り方や作り手っていうのが、ものすごくバリエーションが増えたっていう時代でした。

 やっぱり1番大きいのは、ユーザーが時間や場所を選ばずダウンロードできるようになった。その手軽さだとか消費性っていうのがどんどんに向上していって、それがものすごい正のスパイラルになって、ここまで電子コミック市場だ成長してきたんじゃないかなって思います。

コミックシーモアはコミック配信事業でトップクラスの事業スケールを誇る

──コミックシーモアは12年にサービスインされてますけども、 僕の感覚で言うと、書籍の電子化ってやりたいところはすごくやってるんだけど、なかなか全体が乗ってこないっていう時期が長かったように思います。12年っていう時代って、やはり出版社によって温度差があったわけですよね

朝日:ありましたね。ただもうiPhone自体が08年に日本に上陸してましたから、私たちの参入は決して早い段階でもなかったと思います。事実私たちは携帯でこの世の春を謳歌してたものですから、当初スマホでの売り上げが伸びていかなかったのは、そこでアクセル踏み遅れたんですよね。

──それに関連するのかもしれないですけども、御社のサービスって、いわゆるWebブラウザ上で展開していらっしゃいますよね。今多くのマンガ配信プラットフォームはアプリ上で展開しているわけですが、やっぱりそういうところも関係するんでしょうか

朝日:もちろん会社の裏側の事情などはありますけども、やっぱりWeb型とアプリ型では当然その開発費が変わってきます。それはさておきなんですけど、僕らとしてはサービスを進化させていくにあたって、やっぱりアプリ型っていうのは不自由だと。

 ご存じの通り、アプリはOSプラットフォーマーを介して提供していくので、例えば画面を少し変えたいだとか、あとサービスを少し拡張したいだとか、変更したいと考えた時に、スピード感が全く違うんですね。われわれはWeb型の方が圧倒的にそれを柔軟に早くできるっていうことを、重視してます。それとオープンインターネットですから、さまざまなところからリンクで顧客の流入を取ることができるっていう点だとか。

 あとアプリと違うのは、決済手段が多様に設定できる点もあります。この3つのメリットを重視して、Web型で今のところ進めているところです。

 一方でアプリ型のメリットもあります。ホーム画面にアイコンが載れば、 そこがもう流入口になりますし、習慣として繰り返し流入を取ることができるという利点もありますね。どちらのメリットを重視するかで、今アプリ型とWeb型が分かれていたり、あるいは両方やられる事業者さんがいらっしゃったりというのが現実だと思うんですよね。

 私たちの場合は、購入はWebで行っていただくんですけど、いったん購入いただいたコンテンツは本棚のアプリっていうのを用意していて、そちらでダウンロードしてライブラリ化していただける。読むことに関してはアプリからでもやっていただけるような立て付けになっている状況です。

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