2023年4月に解禁された給与を電子マネーで受け取れる「賃金のデジタル払い」について、約9割の企業が「導入予定はない」と回答したことが10月16日、帝国データバンクの調査で分かった。6割以上がデジタル払いと口座振り込みの運用二重化などによる「業務負担の増加」を理由に挙げた。キャッシュレス化の進展に向けて多くの利用が期待されるが、現時点ではメリットが見えづらいようだ。
調査は4〜10日にインターネットで実施。1479社の有効回答を得た。
賃金のデジタル払い導入のメリットは、銀行口座から現金を引き出さずに、そのまま買い物などに利用できる点などが挙げられ、銀行口座を開設しづらい外国人労働者らにとっても利便性が上がるとされる。
調査で企業に導入予定を尋ねたところ、「前向き」は3.9%にとどまった一方、「予定はない」が88.8%に上った。
「前向き」の理由は複数回答で、振込手数料の削減53.8%、従業員の満足度向上42.3%、日払いや前払いの容易さなど事務手続きの削減32.7%など。
「予定がない」と答えた企業は、業務負担の増加が61.8%でトップ。制度やサービスに対する理解が十分でない45.0%、セキュリティ上のリスクを懸念43.3%が4割台で続き、人事給与システムの改修費などコスト増が39.2%だった。回答企業からのコメントは「必要と感じない」(専門サービス)、「社会への浸透具合、社員からの要望、セキュリティー対策など多面的な検討が必要」(建設)と、導入に消極的な声が大多数を占めた。
「前向き」とした企業も便利さに期待する一方で、「実際の事務作業の流れ、必要な手続き・手数料などを知りたい」(情報サービス)と情報周知が不十分な状況が浮き彫りとなった。
帝国データバンクは利用拡大に向け、「きめ細かい情報周知のほか、セキュリティー強化、店舗などでのデジタル払い導入と消費者のデジタル払い利用を促す政策の強化が求められる」とし、依然として課題が多いことを指摘した。
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