PCとスマートフォンの関係でいつも思い出すのが、13年に筆者のメールマガジンでベテランPCライターの山田祥平さんと対談したときの話である。この時印象的だったのは、山田さんが「スマホでもできるんだけど、細かいことになってくると"ああめんどくさい"と言いつつパソコンを取り出す」というお話をされていた。
当時の筆者は、今後はスマートデバイスが主力になり、PCは衰退するのではないかと考えていた時期だった。iPadだけで本を一冊書いたりもしていた頃なので、そういう山田さんの意見にあまり共感できなかったのだが、今はめちゃめちゃ共感できる。スマホでも散々やろうとしたが、PCのほうが画面はデカいしキーボードは快適だし、クリエイティブに必要なツールがそろっている。
ただこうした考えは、われわれオジサン世代にとってPCは共に成長してきた盟友であり、知らない事がほとんどないから分かりやすいだけのことのような気がする。
昨今ではスマホで小説を書いてしまう作家や、スマホで動画を撮影・編集してメディアへ乗せてしまう記者や、iPadで作曲してしまう音楽家も登場している。使い慣れたツールであれば、それがPCだろうがスマホだろうが、もうクリエイティブとは関係ない。
日本経済新聞が10月1日付で報じたところによると、現在米国15の州、オランダ、ニュージーランド、フランスでは、学校でスマートフォンの利用を禁止する法律が相次いで施行されているという。学習の妨げになる、依存やいじめの問題が深刻化しているとの理由からだ。
日本においてこれらの問題は、「いつか来た道」だ。すでにケータイの時代から小中学校は持ち込み禁止、高校はスマートフォンを学校に預けるというシステムが完成しており、むしろ「学校でICT使わなさすぎ」が大問題だった。先進国の方向と逆向きだったわけである。そして今はそれらの国が、日本のやり方に向き直り始めた。
ケータイ・スマホ問題を通り過ぎた日本の状況は、年齢層は下がるが電通メディアイノベーションラボと東京大学名誉教授 橋元良明氏との、23年の共同研究に見て取れる。
これによれば、0歳から12歳までで最も多く利用するデジタル機器はスマートテレビであり、年齢が上がるにつれて家庭用ゲーム機が上がってくる。スマートフォンは利用低年齢化が懸念されてきたところだが、12歳で58.5%へ到達というのは、体感的には納得できる数字だ。またPCが全年齢で不調なのは予想通りである。
家庭でPCが利用できないのは、環境が整っていないということもあるが、そもそも子どもが欲しがらないからということが大きいのではないか。それは家庭用ゲーム機の普及率との違いを見れば明らかだ。
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