11月17日投開票の兵庫県知事選で再選された斎藤元彦氏。投票率の大幅上昇にも助けられ、結果的には前回選挙を大きく上回る票数を得た。選挙期間中の斎藤氏の発言を言葉の出現頻度を文字の大きさで表す「ワードクラウド」で可視化してみても、話している内容は告示日と最終盤でも大きな変化は見られず、終始一貫したものだった。
要所要所での斎藤氏の演説は、以下のように展開するケースが多い。
政党や組織の支援がないなかで、一人で選挙戦をスタートさせることへの不安もあったが、SNSを通しての県民の支援が心強かったと感謝し、3年間の自分の実績は間違いではないと強調する既得権やしがらみのない県政の実現は可能だが、そのためには広く県民の力が必要だと訴える既存メディアだけでなく、SNSなどを利用し、県民一人一人が真実を判断し、自分に投票してほしいと呼び掛ける。
ワードクラウドを見ても「改革」「県政」「必要」「支援」などがそれを表している。「学校」「子供」があるのは県立高校への投資という実績を強調する場面が多かったからだ。文書問題を巡る県政混乱については、選挙戦終盤で自らの正当性を強調するなどやや変遷したが、陳謝する場面が目立った。
一貫していた斎藤氏とは異なり、元同県尼崎市長の稲村和美氏の演説は当初は自らの政策を訴える内容が多かったが、終盤には対立候補批判などが増えるなど変化が見られるようになった。
選挙戦を通じて斎藤氏を押し上げたのは、自身も「大きかった」と振り返るSNSの活用だ。
斎藤氏本人だけでなく、政治団体「NHKから国民を守る党」党首、立花孝志氏やボランティアが、写真や演説動画、「#さいとう元知事がんばれ」といったハッシュタグの拡散に貢献した。
斎藤氏も当選翌日の会見で「草の根的にSNSでいろんな人が私の政策を整理して、動画発信したり拡散したりしてくれたことは斎藤県政を理解してもらう中ですごく重要だった」と振り返っている。
SNSの正と負の側面を象徴するような今回の選挙戦。その負の側面は各方面への誹謗(ひぼう)中傷としても表れた。18日には県議会調査特別委員会(百条委員会)の委員も務めた県議が「一身上の都合」を理由に辞職した。同日の百条委後の会見で出席した委員は「家族も追い込むほどのネットの暴力があった」と指摘している。
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