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サポート終了後もWindows 10を使い続ける方法と、その注意点

» 2024年12月04日 15時30分 公開
[阿久津良和ITmedia]

 2025年10月14日にサポート終了を迎えるWindows 10。Windows 11へ問題なく移行できる企業はともかく、人材や予算が限られる中小企業は色濃い課題を残す。しかし、実は米MicrosoftはSQL ServerやWindows Serverなどに対して、最大3年間のサポート延長を得られる有償のESU(拡張セキュリティ更新プログラム)を提供している。

photo Windows 10のイメージ(画像はMicrosoft公式サイトから引用)

 PCリース企業と契約した更新タイミングやIT部門の予算によっては、ESUを活用してWindows 10を使い続けなければならないケースもあるだろう。本記事ではWindows 10用のESUを掘り下げる。

Windows 10 ESU 利用の注意点と勘所

 ESUの法人向け提供は2024年4月に決まった。また、同年10月には消費者向けPCにもESUを提供することが明らかになった。ただし最初に述べておくと、ESUはWindows 10のライフサイクルやテクニカルサポート延長を目的としていない。あくまで緊急および重要なセキュリティ更新プログラムのみ適用できるサービスだと認識した方がよい。また、Windows 10 ESUを適用するには、Windows 10 バージョン22H2に更新しておかなければならない。

photo Windows 10 ESUの概要(Microsoft Learn Windows 10用の拡張セキュリティ 更新プログラムから引用)

 ESUのアクティベーションキーは初年度61ドル(クラウドベースの管理ソリューションを使っている企業は45ドル)。Windows 365、Azure Virtual DesktopでWindows 10を実行している場合は無償だ。ESUは最大3年まで利用できるが、翌年は122ドル、翌々年は244ドルと倍額に増加。企業および個人の資産を圧迫する。

 つまりESUは、Windows 10を継続利用してIT資産を維持できる利点はありつつも、ESUでIT予算をひっ迫するので、あくまでも延長施策として捉えた方がよいわけだ。導入タイミングも難しく、Windows 10 ESUライセンスはサポート終了日の1年前である2024年10月から購入可能だが、2年目かつWindows 10サポート終了の2025年10月に合わせて申し込んでも、1年目の費用61ドルを支払う必要がある。

 なお、法人向けESUはMicrosoft 365管理センターやMicrosoftのリセラー、Microsoft Storeなどで取得できる。消費者向けWindows 10 ESUはMicrosoft Store経由と思われるが、本稿執筆時点で日本マイクロソフトからの公式発表はない。

 ESUの有効化は「ボリューム ライセンス認証管理ツール」からESUプロダクトキーを追加した後に、ファイアウォールの設定変更やESUキーのアクティベーションを行う。有効化以降はクラウドベースのエンドポイント管理ソリューション「Microsoft Intune」やクラウド経由でWindowsをキッティングできる「Windows Autopatch」を使用した更新プログラムの管理・監視が可能になり、通常のWindows Updateや、Windows 365などクラウドベースのWindows 10は自動的にセキュリティ更新プログラムを取得可能な設定になる。

 筆者自身は2021年10月からWindows 11を使用しているが、バージョン23H2あたりで安定性が増してきた。とはいえ、特にUI周りの変化はフロントエンド・バックエンドの混乱を招き、IT部門はマニュアル再作成や操作指南といった負担が発生する。決してWindows 10からWindows 11への移行は容易ではないので、リセラーやSIerの手を借りるか、組織の技術力を蓄積しなければならない。

 一方で先日Microsoftが開催した年次イベント「Ignite 2024」では、Windows 11について、Microsoft Entra IDアカウントを持つ組織向けのバックアップ機能や、さらなるセキュリティの強化、.NET 9を基盤とした新UIデザインに加え、Windows 365用のシンクライアント「Windows 365 Link」も発表された。ESUは有用だが、Windows 11を巡る周辺環境も充実しつつある。IT部門の責任者は経営層と相談を重ねながら、組織のIT環境を熟考すべきだ。

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