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ドローンを“空飛ぶ避雷針”に NTTが雷の誘導に成功、社会実装も視野

» 2025年04月18日 20時15分 公開
[ITmedia]

 NTTは4月18日、ドローンによる雷の誘発・誘導実験に、世界で初めて成功したと発表した。雷雲の位置に合わせてドローンを移動させ、積極的に雷を発生させた上で、安全な場所に誘導する手法だという。

photo NTTが開発した耐雷ドローン(出典:ニュースリリース、以下同)

 同社は、雷が直撃しても誤作動や故障を起こさず、一般的なドローンにも搭載可能な独自の「耐雷ケージ」を設計。このケージを装備した「耐雷ドローン」を用い、2024年12月から2025年1月にかけて、島根県浜田市の山間部(標高900m)で誘雷実験を行った。

 2024年12月13日には、雷雲の接近を確認したタイミングで、誘雷装置を搭載したドローンを高度300mまで上昇させた。ワイヤーを通して地上設備と導通させることで、ドローン周囲の電界強度を急激に高め、人工的に雷を誘発。雷をドローンに落とし、地上へと放電させることに成功したという。

photo ドローンによる誘雷の実験系
photo 雷誘発技術の原理
photo 雷誘発時の観測波形

 実験では、雷の発生と同時に破裂音やワイヤーを巻き取るウインチ部の発光、耐雷ケージの一部が溶断する様子が確認された。一方で、ドローン本体は誘雷後も安定して飛行を継続した。

photo 実験時のウインチの発光

 同社によれば、開発した耐雷ドローンは、自然落雷の98%以上に耐えられる性能を持つ。自然落雷の平均値の5倍に相当する、150kAの人工雷を加えた試験でも、故障や誤作動は発生しなかったという。

photo ドローンの耐雷化技術。金属製のシールドで雷の直撃時に流れる大電流を迂回させる仕組み

 今後はドローンによる誘雷の成功率を高めるため、発雷位置の高精度な予測や、雷の発生メカニズムに関する研究を進める。さらに、誘雷によって得られるエネルギーの蓄積・活用も視野に入れ、蓄積技術の開発にも取り組んでいくとしている。

photo 社会実装に向けて取り組むという

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