大阪・関西万博の入場料を巡り、80歳以上は「無料」とする誤った情報がインターネット上に広がっている。米IT大手Googleの検索サイトでも「万博」「高齢者」と打ち込むと、AIの回答で80歳以上は無料と示される状況だ。日本国際博覧会協会(万博協会)の相談窓口にも「80歳以上は無料なのか」との問い合わせが複数あり、Googleは「さらなる改善を続ける」としている。
万博協会によると、万博の入場料は、会期中に共通する「一日券」が大人(18歳以上)7500円、中人(12〜17歳)4200円、小人(4〜11歳)1800円。協会の広報担当者によると、入場無料は3歳以下の幼児に限られるとし、「高齢者の割引は実施していない。80歳以上無料は誤った情報だ」としている。
だが、ネット上には「大阪万博で80歳以上が無料入場!」などと題した解説記事があり、万博の公式サイトから事前申請すれば無料の特典が受けられるといった虚偽の内容がつづられる。このため、万博協会の問い合わせ窓口「総合コンタクトセンター」にも「80歳以上は無料なのか」という問い合わせが複数寄せられており、「その都度、正しい情報を伝えるようにしている」(協会の担当者)という。
大阪府岸和田市の情報サービス会社社長の男性(57)も、83歳の母親を万博に連れて行こうと今月、Googleのサイトで「万博」「高齢者」と検索。すると、Googleの新機能「AIによる概要(AI Overview)」で「大阪・関西万博では、80歳以上の方は無料で入場できます」との表示が出てきた。
その後、万博の公式サイトを調べ、「シニア割引の適用はございません」との記載を確認するなどし、新機能の回答が誤りだと分かったという。男性は「AIの回答に危うく引っかかるところだった」と話す。
Googleの新機能は検索ワードに基づき、関連性の高いサイトから情報を集めてAIが独自の回答を生成し、検索結果ページのトップに表示する仕組み。独自の生成AIモデル「Gemini」の技術を用いており、昨年5月に米国で公開。同年8月には日本でも利用できるようになった。
一方で、新機能がサイトの虚偽情報を見抜けず、誤った内容を表示するケースもある。実際、Xの投稿では、テレビ番組のキャラクターが「安楽死処置された」などの誤回答も紹介されている。万博の「入場無料」を巡る誤回答も虚偽情報が影響した結果とみられ、前出の男性は「AIにも限界があるのだろう」と話す。
新機能について、Googleは取材に対し「誤って解釈するといった問題がある場合はシステムの改善に役立てている」とし、「AIによる概要の正解率は定評のある他の検索機能と同等で、さらなる改善を続けている」などと答えた。
IT技術に詳しい神戸大の森井昌克特任教授(情報通信工学)は「まだAIが全ての虚偽情報を見抜ける段階ではない。今後精度が向上しても限界はある。利用者はまず公式サイトなどで正しい情報をチェックすることが大事だ」と指摘している。(宮本尚明)
copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.
Special
PR