6月のドローン業界は、衝撃的なニュースからはじまった。ウクライナがロシアの爆撃機を狙った大規模ドローン攻撃を実施したのだ。ロシア国内にひそかに潜入させた合計117機のドローンは、ロシアの戦略巡航ミサイル運搬船の34%に大打撃を与え、このミッションを遂行した最も遠かった場所は、国境から約4500キロも離れたところだったという。
日本では、ドローンはラジコンの延長といったイメージが強いかもしれない。しかし、いまやドローンの活用は、このような国防上の重要なピースとしてだけではなく、日本の産業界においても「LTE通信による遠隔運航」や、事前にプログラムした飛行ルートのオートパイロットによる「自動航行」が前提になりつつある。
具体的な活用シーンは、太陽光パネルやビル壁面の点検、人が行くには困難な山間の鉄塔点検、災害時の広域調査や緊急物資輸送、施設の夜間警備などさまざまだ。もちろんそれ以外にも、「手動操縦」による施設点検などの活用事例も豊富で、もはやドローンは私たちの暮らしや社会に溶け込んでいる。
同時にAIの活用も進んでいる。例えば、取得したデータから劣化部分をAIで自動検知してインフラ点検の一次スクリーニングに活用する。飛行中に周辺の画像データを自動解析して障害物を自動検知・回避するなど、活用方法も幅広い。
6月4日より3日間、幕張メッセで「第10回 Japan Drone 2025」と「第4回 次世代エアモビリティEXPO 2025」が開かれた。2025年は出展数285社、来場者数2万3049人で、いずれも過去最高を記録したという。
今年も「災害対応」がメインストリームだったように思う。背景には、24年1月1日に発生した能登半島地震で災害直後の広域調査や、インフラ点検、緊急物資配送などでドローンが用いられたことや、25年1月28日の埼玉県八潮市道路陥没事故でも、被災地調査に小型ドローンが用いられたことなどがある。
Japan Drone出展者らは、「災害対応や防災を目的に、自治体や地域のインフラ事業者からの注目が高まっている」と口々に語った。
なかでも今後のトレンドになると感じたのが、テラ・ラボの展示だ。愛知県名古屋市でガス配管工事などを手掛ける山田商会と、ゴールドスポンサーとして共同出展した。「これからは地元の事業者が主役。どんなドローンがあって、どの用途にはどれがいいのか、利用者は目利き力を磨いて機体やサービスを選び、運用していくスキルが求められる」というメッセージは大変印象的だった。災害時、いきなりドローンに限らず不慣れなソリューションを使うのは難しい。地元の事業者が日常使いした延長線上にこそ、確実な活用があるからだ。
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