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相次ぐ処理施設での“リチウムイオン電池火災”、総務省が実態調査 現場職員からは嘆きの声も

» 2025年06月26日 06時30分 公開
[ITmedia]

 総務省は6月25日、リチウムイオン電池を内蔵した製品の回収・再資源化に関する調査結果を公表した。市区町村が回収するごみにこれらの製品が混入し、処理施設などで火災が頻発している実態を踏まえたもの。

photo 総務省公式Webサイトより

 調査は全国50市を対象に実施。総務省によれば、2023年には調査対象のうち45市(全体の9割)で、リチウムイオン電池が原因とみられる火災が発生している。19〜23年の5年間では、「廃棄物処理施設が稼働停止に追い込まれる」といった大規模な被害が、15市において計17件発生したという。

photo 調査対象50市における火災などの発生状況(総務省の発表資料より、以下同)

 43市では実際に不燃ごみなどからリチウムイオン電池製品を回収し、分析した。調査対象となった2854点のごみの中には、電池単体のほか、リチウムイオン電池を含む加熱式たばこや携帯電話、モバイルバッテリー、電気かみそりなどが多くみられた。

 資源有効利用促進法に基づき、製品メーカーには自主回収や環境配慮設計、リサイクルマークの表示といった責務があるが、回収品のうち電池が容易に取り外せるものは1割程度にとどまった。リサイクルマークの表示があったものも5割程度だったという。

photo 混入していたリチウムイオン電池製品(LIB製品)についての調査結果

 総務省はこうした調査結果から、「市区町村が回収したリチウムイオン電池の4〜5割程度は、可燃ごみやプラごみ、不燃ごみといった再資源化が見込めないごみ区分に出されている」と試算している。

photo 消費者による排出状況や市区町村の回収・処分状況の試算

 回答のあった市の46%では、処分事業者が確保できないなどの理由で、回収した製品を焼却・埋立て・一時保管していた。破損や膨張した電池製品の処分先が見当たらず、自庁で保管している事例もあり、現場の職員からは「火災リスクが精神的な負担になっている」との声もあったという。

 こうした状況を受け、総務省は関係省庁に以下の対応を求めた。

  • 製品メーカーによる回収対象品目の拡大(加熱式たばこなどを含む)
  • 市区町村への情報提供(保管方法や安全な処分方法など)
  • 住民による排出実態の把握と周知の推進

 あわせて、再資源化が可能な処分事業者の育成や、破損・膨張品の処分方法の把握、安全な処分手順の検討についても進めるべきだとした。

 リチウムイオン電池による火災事故は2023年度に8543件発生しており、主な原因は「誤った捨て方」だとされる。破砕や圧縮などによって発火のリスクが高まるリチウムイオン電池だが、モバイルバッテリーを「燃やさないごみ」に混ぜるといった、高リスクな方法で廃棄されるケースが後を絶たない。

 現行でも家電量販店などでの回収スキームはあるが、対象はJBRC(Japan Portable Rechargeable Battery Recycling Center:小型充電式電池の再資源化に取り組む一般社団法人)会員企業の製品に限られる。

 今回の調査では、市区町村におけるリチウムイオン電池製品の回収の取組状況も明らかになった。2023年度の実績では、「実施中」または「実施に向けて調整中」と回答した自治体が約73%を占めていた。今回の調査対象50市に限ってみると、94%が定日回収や回収ボックスの設置など、何らかの回収策を実施していた。定日回収を実施していない主な理由としては、財政的負担や安全面での課題が挙げられた。

 こうした課題については、環境省も2025年3月末に通知を出している。「人材やコストの面で対応が難しい自治体もあり、すぐには実現できないかもしれない」と現状に理解を示す一方で、「家庭から出るリチウムイオン電池は、一般廃棄物として自治体が回収するのがあるべき姿」との方針を示していた。

photo 環境省による、「分別・回収方法の基本的考え方」(1/2)(出典:環境省が3月末に出した資料
photo 環境省による、「分別・回収方法の基本的考え方」(2/2)(出典:同上)

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