この記事は新野淳一氏のブログ「Publickey」に掲載された「HashiCorp創業者のミッチェル・ハシモト氏が打ち明ける、一緒に仕事をして最高だったクラウドベンダーはMS、Google、Amazonのどれだったか?」(2025年7月1日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。
米HashiCorpを創業したミッチェル・ハシモト氏は、2024年に同社を去った後、現在は個人開発者としてターミナルエミュレータ「Ghostty」の開発に取り組んでいます。
HashiCorpは、特定のクラウドに依存しないTerraformやVaultなどのツールで知られています。それゆえに同社は米Amazon Web Servicesや米Microsoft、米Googleなどの大手クラウドベンダーを始めとする多くのクラウドとの協力や協業などを経験しており、ハシモト氏は同社のCTOとしてその最前線で活躍していました。
2025年6月25日、ハシモト氏はXで当時大手クラウドベンダ―と一緒に仕事をした経験について質問を募集する「AMA」(Ask Me Anything)を行い、フォロワーから寄せられた質問に答えています。
私はここで、Microsoft、Google、Amazonと過去の仕事を通じて経験したいろんな考えや経験を皆さんと共有しようと思います。あれから時間が十分に過ぎましたし、もう彼らが私を痛めつけることもできませんから。私に聞きたいことはありますか? 何でも聞いてください。(まもなくオフラインになりますので)のちほど答えていきたいと思います。
ハシモト氏の答えには、当事者として経験した者にしか答えられない、驚くほど率直で興味深い内容が含まれていました。
この記事ではその中からいくつかをピックアップし、日本語訳として紹介したいと思います。
Q:一緒に仕事をする上でどこが最高でどこが最悪でしたか?
一緒に仕事をして最高だったのはMicrosoftでした、親切で準備万端なチームプレイヤーたちでした。Googleは意欲的でフレンドリーでしたが、ビジネス的なことは苦手だったようです。Amazonは最悪。傲慢な態度(直接言葉にはしないけれども「我々はいつでも君たちを殺すことができる」という雰囲気)でした。それに、彼らと話ができることに感謝しなければならないような、そんな感じでした。
Q:最も冷酷だった会社はどこでしたか? そして一緒に仕事をして最も後悔した会社は?
Amazonは圧倒的でした。一緒に仕事をしたことを後悔はしていませんが、彼らを大物として敬いつつ彼らの取り分を与えなければなりませんでした。だから、私は純粋に彼らと働いて楽しい経験をしたことはありません(組織のレベルでは、素晴らしい人たちでしたが!)。
Q:それぞれの会社のコアバリューとはどのようなものでしたか? つまり、彼らは組織として何に関心があり、何に関心がなかったのでしょうか?
私は次のように感じていました。
Amazon:製品提供、質より量。プロダクトマネージャーたちはRe:Inventでの新製品の発表を求めていました。
Microsoft:売上。彼らが求めていたのは売上を作ることでした。誰でもそうではありますが、Microsoftはそれが顕著でした。
Google:テクノロジー。パートナーシップミーティングでは、アーキテクチャー的なことを延々と議論して時間を浪費しました。とても混乱していました。
これはどれも私の個人的な意見を単純化して、特徴を抜き出したものです。
Q:Microsoftでは誰と一緒に仕事をしたのですか?
Microsoftの素晴らしいところは、組織横断的に私たちを紹介してくれたことでした。私は四半期に一度、レドモンドに2〜3日滞在し、AzureからWindows Kernel、Office(365!)まで、あらゆる人たちと会いました。楽しくて、よい人たちでした。
Q:Terraformを統合する際に最も簡単だったクラウドAPIはどれでしたか? そしてなぜAWSは最悪だったのでしょう?
(笑)。Azureは実際のところ、扱う上で最悪のAPIでした。でもMicrosoftはフルタイムのエンジニアを投入してくれたのです…すごい!。Googleは最も簡単で、一般的に一度認証のボスを倒してしまえばそれでよかった。Amazonが大変だったのは、APIが製品によって大きく異なっていたからです。
Q:もしあなたが今、クラウドを構築しなければならないとしたら、やはりTerraformを選びますか? それとも他の何かを選びますか?
Terraformは今でも最高です。でも、誰かがそれを別のものに置き換えるところも見てみたいものです。今ある主要なTerraformの代替製品はあまり面白くありません、なぜなら(それはTerraformの)繰り返しであり模倣だからです。根本的に新しいアイデアが登場するのを見てみたいです。IaC(Infrastructure as Code)は停滞している感じがします。
Q:3社のいずれかと買収に関する話をしたことはあるのでしょうか?
私が重役を務めていた期間において、真剣な話はありませんでした。私たちはクラウドに中立的なベンダーであり、どのベンダーもそのバランスを崩したくないという健全な緊張感が常にあったように思います。それ以外には多くの話がありましたが……私はMicrosoftと話すのが好きでした。
Q:買収される相手としてIBMを選んだ理由は? HashiCorpの買収を検討しているクラウドプロバイダーは常に存在したと思いますが、IBM以外にはどのような選択肢があり得たのでしょうか?
IBMとの契約が実現したとき、私はすでにHashiCorpを去っていました。ですので買収が発表される直前までそのことは全然知りませんでした。だからなぜIBMなのかは分かりません。私が重役であった期間に、クラウドプロバイダーと買収の話に真剣に取り組んだことはありませんでした。その他の可能性は数多くありましたが、ここで共有するのは気が引けるので止めておきます。
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