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科博の「大絶滅展」に行ってみた 5億年中、5回起きた大量絶滅「ビッグファイブ」って何?(2/3 ページ)

» 2025年12月10日 08時00分 公開
[彩恵りりITmedia]

 会場はこの大絶滅スフィアを中心に、ビッグファイブ各時代の展示ゾーンが、エピソード1からエピソード5として放射状に配置されています。多くの特別展では、一方向の通路型に展示が並んでいることが多い中、珍しい形と言えます。

 放射状に配置された各時代の展示ゾーンは、おおむね左手に大量絶滅前、右手に大量絶滅後の生物化石などが展示されています。ここでは各展示区画の見どころを書きますが、筆者が若干マニアックな気質のため、いわゆる“映える”展示ばかりではないことはあらかじめご了承いただきたく思います。

O-S境界(エピソード1)

 リニア(Rhynia gwynne-vaughanii):植物が陸上進出を果たした時代に出現した、最初期の植物(維管束植物)の1つ。シリカ(二酸化ケイ素)が植物を封じたことにより、約4億1000万年前の植物を細胞レベルで観察可能という保存状態の良さがウリ。北海道大学の伊庭靖弘氏らが考案した「デジタル・フォッシル・マイニング」(デジタル化石マイニング)と呼ばれる手法で取得された3Dデータに基づく模型も展示されている。

F-F境界(エピソード2)

 タリーモンスター(Tullimonstrum gregarium):頭の突起の先端についた目や、カニのようなハサミが先端に付いた長い吻(ふん、口周辺の前方へ突出している部分)などが特徴の謎の動物だ。特徴が著しい割に、他に似た動物が見当たらないことから“モンスター”と呼ばれており、正体を明らかにしようとした23年の研究により、逆に正体がかえって分からなくなってしまったといういわく付きの動物。

タリーモンスターの実物化石(手前)、復元したタリーモンスターの模型(奥) 奇怪な姿からモンスターと名付けられているが、体長は10cm程度の小ぶりな生き物(Photo:よろづ萩葉)

P-T境界(エピソード3)

 ヘリコプリオン(Helicoprion davisii):電動丸ノコを思い起こさせる、らせん状に巻いた歯が特徴的な、ギンザメに近いと考えられている軟骨魚類。この歯は下顎についていたと考えられています。

T-J境界(エピソード4)

 セミオノタス(Semionotus sp.):現在の北アメリカ大陸に当たる地域の湖に生息していた魚類。湖ごとに種が分かれていたことが分かる上に、地層を年単位で読み解くことができることから「種が分かれるのに5000〜8000年かかった」と、時間スケールが正確に分かるのが特徴的だ。これは現在のビクトリア湖周辺のカワスズメ科(シクリッド)とほぼ同じスピード。

K-Pg境界(エピソード5)

 エクトコヌス(Ectoconus ditrigonus):哺乳類は、白亜紀末の大量絶滅後の数十万年間で早期に大型化。大量絶滅からわずか40万年後に出現したエクトコヌスも、推定体重25kgのがっちりとした体格の哺乳類だ。同時代の他の化石はレプリカだが、これは実物。

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