このシナリオは米メディア「Moore's Law Is Dead」による11月24日の記事で語られている。シナリオそのものは当該サイトを見て頂くのが良いのでここでは割愛するが、契約では将来的に両社合わせて月当たり90万枚のDRAMウェハをOpenAIに納入することになるという。これはおおむね「現在の」DRAM生産能力の40%に相当する。これにより、Panic Buyが11月から始まった、というのもちょっと不思議な話ではあるが、あえてこれが正しいとするとこんな具合だ。
(1)→(2)への移行に1カ月ほど掛かった結果が11月に突然発生したメモリ高騰と品不足、という風に考えれば納得できなくもない。ただ、実は若干このシナリオにも違和感はある。
そもそも、OpenAIが必要とするのはHBMなのは明白だ。用途は同社が進めているStargateプロジェクトと、10月に発表された米AMDとの6GW級データセンター分の契約向けと考えられる。またOpenAIは現在自前でAIプロセッサを開発する事を発表しているが、恐らく27年以降の投入になるだろうから、25〜26年分についてはAMD及び米NVIDIAのGPU向けの分を自前で確保したという事だ。
つまりこれまでAMDやNVIDIAがSamsung/SK HynixとContractを結んで調達していたHBM3e/HBM4が、OpenAI納入分に関して言えばOpenAI経由で提供されるという話になるので、新規に需要が発生する訳ではない。AMD/NVIDIAのGPUのOpenAI以外への供給は、HBM不足で遅れる可能性は存在するが、そもそもAMD/NVIDIA共にボトルネックはHBMよりもGPUのチップそのものであって、こちらはTSMCの供給能力が限界だから、実はHBM不足が起きる可能性は低いと思われる。
もう1つは、AI向けは本来HBMだけで他のメモリは不足する可能性は低い点だ。DDR5はまだしもLPDDRまで不足するとなると、これはもう正常な市場原理ではなく、Panic Buyの可能性が非常に高い。
その辺りを鑑みると、ありそうなシナリオは「メモリトップ2社がHBMに傾斜生産を掛けた場合、自社分を調達できなくなる可能性がある」と感じたサーバメーカーなどが、DDR5のContractを本来の必要分より多めに発注。これはGPUメーカーのGDDR、スマートフォンメーカーのLPDDRなども同じで、結果各メーカーへのContractの要求が生産量を超え、今回の事態につながったというあたりが妥当かもしれない。
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