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“DRAMパニック”はなぜ起きたか、価格はいつ落ち着くのか? 狂騒の裏で起きていること(3/5 ページ)

» 2025年12月12日 08時00分 公開
[大原雄介ITmedia]

「OpenAI買い占め説」の妥当性は?

 このシナリオは米メディア「Moore's Law Is Dead」による11月24日の記事で語られている。シナリオそのものは当該サイトを見て頂くのが良いのでここでは割愛するが、契約では将来的に両社合わせて月当たり90万枚のDRAMウェハをOpenAIに納入することになるという。これはおおむね「現在の」DRAM生産能力の40%に相当する。これにより、Panic Buyが11月から始まった、というのもちょっと不思議な話ではあるが、あえてこれが正しいとするとこんな具合だ。

  1. 今回の契約により、Samsung及びSK Hynixは自社のDRAM製造ラインの中で、HBM向けの割り当てを増やすことを検討せざるをえなくなった。これは当然その他(DDR/GDDR/LPDDR)の割り当てに影響を及ぼすことになる。韓国の韓経ドットコムは11月21日の記事で、SK Hynixが26年にはDRAM生産量を現在の8倍に増やす計画であると報じたが、これが間に合うとしてもしばらくの間はDRAM供給が足りない可能性は否定できない。
  2. 結果として、SK Hynix及びSamsung相手のContractは今後は良くて納期遅延、下手をすると契約キャンセルすら視野に入る事を考慮する必要性が出てくる。こうなると代替策はMicronとContractを結ぶしかなく、今度はMicronのContractがオーバーキャパシティーになって、やはり破綻する。
  3. こうなると、大口契約を結んでいる顧客はともかく小口の顧客に対してはどうしてもContractが結べなくなる、もしくは納期が長くなる・納入量が減るといった対応になるのは避けられない。ではそうした小口の顧客はどうするか?というと、Spotマーケットで買いあさるしかない。

 (1)→(2)への移行に1カ月ほど掛かった結果が11月に突然発生したメモリ高騰と品不足、という風に考えれば納得できなくもない。ただ、実は若干このシナリオにも違和感はある。

 そもそも、OpenAIが必要とするのはHBMなのは明白だ。用途は同社が進めているStargateプロジェクトと、10月に発表された米AMDとの6GW級データセンター分の契約向けと考えられる。またOpenAIは現在自前でAIプロセッサを開発する事を発表しているが、恐らく27年以降の投入になるだろうから、25〜26年分についてはAMD及び米NVIDIAのGPU向けの分を自前で確保したという事だ。

 つまりこれまでAMDやNVIDIAがSamsung/SK HynixとContractを結んで調達していたHBM3e/HBM4が、OpenAI納入分に関して言えばOpenAI経由で提供されるという話になるので、新規に需要が発生する訳ではない。AMD/NVIDIAのGPUのOpenAI以外への供給は、HBM不足で遅れる可能性は存在するが、そもそもAMD/NVIDIA共にボトルネックはHBMよりもGPUのチップそのものであって、こちらはTSMCの供給能力が限界だから、実はHBM不足が起きる可能性は低いと思われる。

 もう1つは、AI向けは本来HBMだけで他のメモリは不足する可能性は低い点だ。DDR5はまだしもLPDDRまで不足するとなると、これはもう正常な市場原理ではなく、Panic Buyの可能性が非常に高い。

 その辺りを鑑みると、ありそうなシナリオは「メモリトップ2社がHBMに傾斜生産を掛けた場合、自社分を調達できなくなる可能性がある」と感じたサーバメーカーなどが、DDR5のContractを本来の必要分より多めに発注。これはGPUメーカーのGDDR、スマートフォンメーカーのLPDDRなども同じで、結果各メーカーへのContractの要求が生産量を超え、今回の事態につながったというあたりが妥当かもしれない。

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