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“DRAMパニック”はなぜ起きたか、価格はいつ落ち着くのか? 狂騒の裏で起きていること(4/5 ページ)

» 2025年12月12日 08時00分 公開
[大原雄介ITmedia]

なぜCrucialは休止でなく終了になったのか

 ここで冒頭のCrucialの話に戻る。MicronはCrucialブランドを29年に渡って維持してきた。Micronの中でCrucialブランドは「MCBU」(Mobile and Client Business Unit)という部門の管轄となる。MCBUの売上にはCrucial以外にスマートフォン向けのメモリやFlashも含まれているから、MCBUの売上>Crucialブランドの売上になるわけだが、MCBUの25年度(〜25年8月28日)の売上は118億5900万ドルで、Micronの売上の32%ほどを占める。

 24年度に比べると2%程の増加で、成長率そのものはそれほど大きくないが、金額としては無視できない比率だ。何より25年度の決算報告書を見る限り、Crucialブランドを廃止する話はかけらも無く、つまり9月から現在までの間に急転直下で廃止が決まったとみられる。

 理由として考えられるのは、Contractが積みあがってしまい、Crucial向けに生産能力を割く余地が無くなり、しかもそれが短期的に解決するめどが立たないから──という事情だろう。

 CrucialはMicronの品質を保った消費者向けブランドという位置付けなので、先に出てきたSpot向けの低品質品などを充てる訳にはいかない。ただし社内ブランドのため、そうそう過大な利益を載せるのも難しい。

 ところがContractが殺到している現在では、契約条件は限りなくSpotに近い相場まで高騰している可能性が高い。つまりビジネス的にはCrucial向けを犠牲にしてでもContract向けを優先する方がもうけがでる。そして恐らく最低でも1年程度はこの状況が続くと判断したのだろう。

 最近ではSSDやHDDまで高騰しているが、これはもうHBMも何も関係ない、完全なるPanic Buyである。逆にそうした状況が続いている限りは、Crucialブランドそのものを維持するのが困難である、と判断したと想像される。

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