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台湾・TSMCの情報漏洩で日米企業が捜査対象に 「核心的技術」友好国と微妙なかじ取り

» 2025年12月19日 15時55分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 台湾経済を牽引(けんいん)する半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の機密情報漏洩(ろうえい)を巡り、検察当局が改正国家安全法を適用した一連の捜査対象が「友好国」である日米の企業だったことに注目が集まっている。頼清徳総統が掲げる日米などとの「中国抜きのサプライチェーン(供給網)の構築」にも影を落とす恐れがある。

台湾経済の牽引役

 TSMCの売上高は今年、AI関連の強力な需要によりドルベースで前年比30%超の伸びとなる見通し。同社の売上高は域内総生産(GDP)の10%を超えており、2025年の台湾の経済成長率を7%超に押し上げる要因の一つだ。

 経済の屋台骨を支えるTSMCの「核心的技術」を守るため、台湾当局は22年、中国による産業スパイを念頭に国家安全法を改正し「経済スパイ罪」を新設。しかしこの条項が初めて適用されたのは日系企業を巡る捜査だった。

中国念頭の法改正だったが

 台湾の検察当局は12月2日、国家安全法違反罪などでTSMCのサプライヤーである日本の半導体製造装置大手、東京エレクトロンの台湾子会社を起訴したと発表。1億2000万台湾元(約6億円)の罰金を求刑した。

 東京エレクトロンの台湾子会社を巡っては8月、同社の元社員が営業秘密の含まれるデータをTSMC技術者らに提供させたとして起訴され、懲役14年を求刑された。検察側は、元社員を監督する法的義務があるとして台湾子会社も起訴したが、組織的な関与については言及していない。

 さらに検察当局は11月27日、米半導体大手Intelに移籍したTSMC元幹部の台湾の自宅を国家安全法違反などの容疑で捜索し、PCを押収したと発表した。TSMCは、元幹部が競合のIntel側に営業秘密を漏洩した疑いがあるとして台湾の知的財産・商業裁判所に提訴していた。

米台関係に悪影響も

 この事件は、捜査の進展によっては米台関係に影響する可能性もある。

 米国の半導体産業の復活を目指すトランプ政権は、業績が低迷するIntelに89億ドル(約1兆3800億円)を出資するなど同社のてこ入れを図っている。

「台湾のより積極的な経済安全保障の施策は、米国を怒らせて地政学的なリスクを生み出すかもしれない」。英紙フィナンシャル・タイムズは半導体産業に投資する米ファンド幹部の懸念の声を伝えた。

 中国が台湾への統一圧力を強める中、頼政権は米国の軍事的支援を必要としており、日本とも半導体分野で連携を深めたい考え。「核心的技術」の情報保護と、親密な友好国との関係の間で、台湾は微妙なかじ取りを求められそうだ。(台北 西見由章)

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