第一回で大企業の新規事業開発における「実行の壁」と、第二回でそれを乗り越えるための「外部ネットワーク」の重要性について説いてきた本連載。第3回となる今回は、ビジネスの現場で急速に普及が進む「生成AI」に焦点を当てる。
新規事業という不確実性の高い領域において、生成AIは単なる効率化ツールにとどまらない。それは、顧客理解を深め、デザインプロセスそのものを変革する強力なパートナーとなり得る。最新の研修講義などの実例を交えながら、現場で起きている変化と具体的な活用法について解説する。
これまでの連載でも触れてきたが、前段として大企業における新規事業のトレンドの変化に触れておきたい。 ここ数年の変化を振り返ると、企業の戦略は明らかにフェーズが変わっている。
2016〜2023年頃まで、多くの大企業では「飛び地」を含めた全方位での新規事業検討が推奨されてきた。オープンイノベーションの掛け声のもと、既存事業の枠にとらわれない斬新なアイデアが求められ、数多くの社内ビジネスコンテストが開催された。しかし、そこで生まれたアイデアの多くは、既存のアセットを生かしきれず、結果として社内の理解や協力を得られないまま、小粒な成果にとどまったり、PoC止まりで消えていったりするケースが散見された。
こうした反省から、2024年頃以降のトレンドは明確に「自社の強み・リソースの活用」へと回帰している。「飛び地」はM&Aやスタートアップとの連携に任せ、自社で取り組む事業は、既存事業との親和性が高く、自社の強みをレバレッジできる領域に注力する。これが、大企業における「勝ち筋」として再認識され始めているのだ 。
この「強みへの回帰」において、イントレプレナーはどのような視点でアイデアを探すべきか。全くの更地から考えるのではなく、「資源(自社とパートナーのリソース)」「自社の技術」「現場(顧客・社会課題)」という3つの起点から事業機会を探索するアプローチが主流となりつつある。既存の知識、既存のアセットを使うことで単純に成功確率を高めることができる。
これに伴い、イントレプレナーに求められる資質も変化している。単に起業家的な突破力を持つだけでなく、社内の文脈を理解し、既存の強みを新しい価値へと転換できる人材が求められているのだ。
こうした現場の変化に加え、生成AIの登場が新規事業デザインのプロセスを劇的に変えつつある。
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