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「ポストイットの山」はもういらない――生成AIは、新規事業を共に作る“パートナー”になりうるかもう迷わない、新規事業のススメ(2/3 ページ)

» 2026年01月05日 08時00分 公開
[アドライトITmedia]

生成AIの波及とワークショップの変遷

 象徴的なのが、顧客理解やアイデア創出を目的としたワークショップの風景だ。これまで、新規事業のワークショップといえば、参加者が壁一面に大量のポスト・イットを貼り出し、ブレインストーミングを行う光景が一般的だった。これは、テクニカルな発想手法を用いて「発想する行為」そのものに焦点を当てた、いわば「狭義のアイディエーション」である。

 しかし、これからの時代に求められるのは「広義のアイディエーション」だ。これは単なる発想にとどまらず、「探索(Explore)」「調査(Research)」「分析(Analyze)」「定義(Define)」といった、アイデアを生み出すための強固な基盤形成を含むプロセス全体を指す。

(Geminiにて作成)

 従来、この「広義のアイディエーション」の前半部分、つまり市場調査や顧客インサイトの分析には、膨大な人的リソースと時間が投下されてきた。デスクリサーチに数週間、インタビューの設計・実施・分析に数週間……。この重たい作業が、新規事業のスピードを鈍らせていた一因でもあった。

 生成AIは、このボトルネックを劇的に解消する。市場データの収集から、競合分析、そして顧客ペルソナの生成まで、AIは瞬時にたたき台を提示してくれる。「ポスト・イットの山」を作って満足するのではなく、AIと共にプロセス全体を高速で回し、仮説検証のサイクルを短縮することができるのだ。

生成AIに踊らされるのではなく、「正しく使う」ためのメソッド

 しかし、ツールが強力であればあるほど、使い手の「問いを立てる力」が問われる。現場では、生成AIが出した答えをうのみにしてしまったり、浅い質問で陳腐な回答しか得られなかったりするケースも散見される。重要なのは、デザインプロセスの中にAIを適切に配置することだ。

 具体例として、アドライトで実践されている徳久悟氏(九州大学大学院 芸術工学研究院 ストラテジック部門 准教授)による講義でのメソッドを紹介する。

 一つは、顧客理解の第一歩であるインタビューにおける生成AIの活用例だ。これまでは対象者を探し出すだけで数週間を要していたが、最新の現場では生成AIを活用した「バーチャルインタビュー」が実施されている。「地方在住の20代・製造業勤務・初期費用を抑えて車を利用したい」といった属性を指定しペルソナを生成した上で、AIに仮想のインタビュイーを演じさせる。そこに仮説に基づいた質問を投げかけることで、初期段階の顧客インサイトを瞬時に、かつ大量に得ることが可能になった。

 もちろん、これはあくまでシミュレーションであり、最終的には生身の人間への検証が不可欠だ。しかし、ゼロから手探りで調査するのと、AIによる「壁打ち」を経て精度の高い仮説を持って挑むのとでは、到達するスピードと深さが全く異なる。

 もう一つの例は、考案したサービスアイデアをブラッシュアップする際の活用例だ。ブラッシュアップのプロセスにおいても、AIは強力なパートナーとなる。ここではAIを「ライター」ではなく「レビュワー(評価者)」として起用するのがコツだ。

 自身が考案したサービスコンセプトに対し、AIに「投資家の視点で論理的整合性をチェックして」「ユーザー視点で競合との差別化となるポイントを評価して」と指示を出す。するとAIは、忖度なしの辛口フィードバックを返してくる。「収益化のロードマップが甘い」「競合他社との差別化が不明確だ」といった指摘は、時に耳が痛いものだが、社内の会議にかける前に論理の穴をふせぐ絶好の機会となる。

 また、カスタマージャーニーマップの作成においても、AIに「たたき台」を作らせる手法が有効だ。ステージ、ステップ、タッチポイント、思考、感情、ペインポイントといった構成要素を指定し、ドラフトを生成させる。人間はそのドラフトを眺めながら、顧客体験を最適化するための機会を発見することに集中する。

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