ラジオをスマートフォンやパソコンで聴けるサービス「radiko」(ラジコ)が2025年12月、スタートから15周年を迎えた。受信機の「1人1台」を実現し、地域や放送時間の制限を取り払ったラジコは、リスナーの減少に悩んでいたラジオの聴き方を大きく変えた。近年はポッドキャスト(聴取期限のない録音番組)やオリジナル番組の提供にも踏み出し、ラジオの枠を超えた未来を目指している。
記者がラジコのスマホアプリを起動してみると、番組のパーソナリティーとして桑田佳祐さん、山下達郎さんらの名前が目に入った。テレビにはほとんど出演していない大物も珍しくなく、さながら声のデパート。スターのおしゃべりを日常的に長時間楽しめるのは、ラジオならではだ。
「YouTubeやいろんなサブスクがあるけれど、(MCを)パーソナリティーというぐらいで、その人となりが一番分かるのはラジオ。公共の電波を使って2時間しゃべり続けるなんてことは、普通はあり得ないですよね」
12月1日、ラジコ15周年の記念イベントでPR大使に就任したお笑い芸人の太田光さんは、ラジオの魅力をこう語った。
2010年のラジコ誕生に関わった三浦文夫・関西大教授は「パソコンでリスナーの下げ止まりに役立てばと考えていたが、当初考えていたよりスマホでラジオを聴くことが特に若い世代で認識されつつあり、ラジオの復活につながるプラットフォームになった」と想像を超えた成長を喜ぶ。
スタート当初は番組のリアルタイム配信だけだったが、14年に放送エリアの枠を超えて全国の番組を聴けるエリアフリー、16年にタイムフリーを導入した。
特にタイムフリーによってラジオは番組表の束縛から解き放たれ、冒頭の大物たちのおしゃべりも、一部をつまみ食いのようにして聴くことができる。また、番組での発言はしばしばネット記事になって、リスナー以外の目にもとまる。
「スポーツ紙などが記事にしてくれた番組を聴こうとしても、以前は手段がなかった。それがタイムフリーによって話題になった番組を聴ける。デパ地下で試食しておいしかったら買うように、タイムフリーでお試しで話題の番組を聴いてみて、楽しかったら生放送で聴いてもらえるのでは」
ラジコの坂谷温プラットフォーム推進室長は、タイムフリー導入時に、ラジオのリスナー拡大の期待があったことを振り返る。また、当時は音楽サブスクの初期で、「新譜をラジコで繰り返し聴けばCDを買わなくなる」といった懸念も音楽業界にはあり、無料のタイムフリーは再生開始から24時間以内に3時間までといった制限を設けるなどしたという。
ラジコは進化を続けている。24年2月からポッドキャストの提供を開始し、同年夏には「オーディオ高校野球」をABCラジオとともに始め、全国どこからでもラジコで甲子園の試合を完全中継で楽しめるようになった。また、25年5月には国際音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」授賞式の完全オリジナルライブ配信も行っている。
広告(CM)にもラジコならではの特徴がある。サービス利用の前提として位置情報を取得しているため、ラジオで流れるCMとは異なり「リスナーが東京・六本木にいるときに、六本木近辺のイベントのCMをあてることもできる」と坂谷室長。車載ディスプレーでスマホを操作できる「アップルカープレイ」「アンドロイドオート」にも昨年対応し、「将来的にはカーナビの目的地の店のCMを先回りして出すなど、可能性は広がると思っている」という。
月間アクティブユーザー数は、コロナ禍の20年に900万を超え、その後落ち着いたものの、850万前後を確保している。当面の目標は1000万だ。
前出の三浦教授は「ラジコはラジオファンにとっては非常にありがたいものだが、新規ユーザー獲得は思うほど伸びていない」と指摘。「自分の推しが出ると自動的にプッシュされるような機能を開発している。みんなが知っているミュージシャンや芸人が出演し、新しい音楽にも出会えるラジオの魅力に気づいてもらうこと、ラジオコンテンツで日本のいろんな文化を海外に発信することが大切だ」と話している。(鵜野光博)
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