2025年11月19日、幕張メッセ。国内最大級の映像・放送機器展「INTER BEE 2025」の基調講演会場は、異様な熱気に包まれていた。テーマは「テレビドラマに革命を起こすAI映像」。筆者が司会を務めた本セッションへの事前申し込みは800名を超え、会場には立ち見が出るほど多くの聴衆が詰めかけた。
聴衆の視線の先にあったのは、2025年9月に放送された日本初の地上波フルAI映像ドラマ「サヨナラ港区」だ。本作は実写のロケや撮影を一切行わず、100%生成AIによって映像を制作。巨大ロボットも闊歩する100年後の廃墟となった東京を舞台に、AIによる映像表現の可能性と限界に挑戦した野心作である。
このプロジェクトを主導したのは、ytvメディアデザイン(読売テレビグループ)のプロデューサー・汐口武史氏と、AIクリエイターの宮城明弘氏(10TEN PARADE)だ。両氏への取材を通じて、その具体的な制作フローとAIが切り開くクリエイティブの未来をひもといていく。
――先日のINTER BEE、非常に大きな反響でしたね。業界内の「AI活用」に対する関心の高さを肌で感じましたが、そもそも、なぜ「フルAI」という手法を選んだのでしょうか
汐口:2024年に韓国のAIスタートアップを視察したのが起点でした。そこで目にしたスピード感や面白さをストーリーコンテンツにどう生かせるか、ずっと考えていたんです。一方で深夜ドラマの現場に目を向けると、本当は壮大なSFアクションを作りたいと思っても予算的に無理で、結局「民宿での立てこもり事件」のような現代劇にスケールダウンしがちじゃないですか。でもAIなら、100年後の廃墟も巨大ロボットも、僕らの想像力次第で画面に出せる。この「制約の突破」を証明したかったんです。
――企画の立ち上がりは、港区の焼き鳥屋さんでの出会いだったそうですね
汐口:その通りです。港区の焼き鳥屋で飲みながら、初対面だった宮城さんと意気投合したのが始まりでした。酒の勢いもありましたが、宮城さんが「できます」と言ってくれたので、そこから1年足らずで放送までこぎ着けることになりました。
宮城:あそこでうっかりできます、と言ったばっかりに大変なことになるのですが……。 汐口さんから企画をいただいた段階で、これは世の中を変える第一歩になる企画だと感じました。AIというもの自体が世の中で受け入れられるかどうかのはざまにあった時期ですが、だからこそ「これはチャレンジするしかない」と、二つ返事で引き受けたのを覚えています。
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