では、なぜこのタイミングでの進出なのか。PayPayの登録ユーザーは7200万人を突破し、2024年の決済回数は75億回。日本で行われる決済の5回に1回をPayPayが占める。取扱高はアプリ単体で12兆円、PayPayカードとの連結で15.4兆円に上る。18年のサービス開始時、PayPayが使われる頻度は3242回に1回だった。わずか6年で国民的インフラと呼べる規模に成長したわけだ。
一方で、世代別の浸透データを見ると、10代後半から40代前半にかけてPayPayの会員数はスマートフォン保有人口に迫っている。コア層はほぼ取り切った状態であり、国内だけで成長曲線を描き続けるのは簡単ではない。
こうした中で国内事業もVisaとの連携を深める。PayPayカード、PayPay残高カード、PayPay銀行デビットカードという3つに分かれていたVisa関連のカード機能を、Flexible Credentialの技術を使って一体化し、年内の提供を目指す。
さらにVisaの「QR Connector」を活用し、訪日外国人がVisa Pay(Visaの認証情報をデジタルウォレットに格納し、タッチ決済やQR決済を可能にするサービス)を使ってPayPayの加盟店で支払える仕組みも整備する。PayPayの国内加盟店は1000万店を超えており、インバウンド消費の取り込みにもつなげる構えだ。
中山社長は「国内を犠牲にして海外に出るということは全くない。事実をちゃんと受け入れながら事業を展開していく」と述べた。海外と国内を切り離すのではなく、Visaのネットワークを共通基盤として両方をつなぐのが、提携の全体像といえる。
ただし、説明会では構想の大きさと詳細の薄さのギャップも浮かび上がった。米国事業の開始時期は未定。ユーザー獲得の戦略を問われても、中山社長は「控えさせていただく」と回答を避けた。差別化について問われれば「米国は多様性に富んだ社会だ。その中で選ばれるサービスになりたい」と述べたが、どう選ばれるのかという肝心の問いには答えていない。
一方、中山社長は自社の変化にも言及している。「これまで自前主義でやってきたが、強い先進的なパートナーとはどんどん組んでいきたい。Visaは最強のパートナーだ」。PayPayにとってVisaとの提携は、国内で築いた成功モデルの延長線上にある挑戦というより、戦い方そのものを変える転換点といえる。
両社の発表はあくまで「検討を開始することに合意した」段階だ。日本で7200万人を獲得し、決済インフラの一角を占めるまでに成長したPayPay。その実績がVisaを動かしたのは確かだろう。だが米国市場は、日本とは競争環境も規制も消費者の習慣も異なる。QRコードの大量キャンペーンで加盟店とユーザーを一気に広げた日本での成功体験は、そのまま持ち込めるものではない。
自前主義を捨て、グローバルネットワークの巨人と手を組む。PayPayの米国挑戦は、勝てるかどうか以前に、この会社の戦い方そのものが変わり始めたことを意味しているかもしれない。
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