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小学館「マンガワン」炎上、危機管理広報のプロが指摘する“初動のマズさ” 漂う不誠実さの正体(1/2 ページ)

» 2026年03月05日 13時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]

 小学館の漫画配信サービス「マンガワン」が物議を醸している。漫画「堕天作戦」の原作者である山本章一氏が児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の罪で逮捕・略式起訴され連載中止になったにもかかわらず、漫画「常人仮面」の原作者としてペンネームを変更の上起用したことが問題視されたもので、SNSでは同社やマンガワン編集部に批判が集中。同サービスから作品を引き上げる漫画家も続出している。

photo 小学館「マンガワン」

 炎上の背景には、未成年への性加害に関する根本的な嫌悪感だけでなく、小学館側の初動のまずさもあった。例えば当初マンガワンのアプリ上でしか声明を出さなかった点や、一度出した声明を削除した点などは、同社への不信感を増幅しただろう。

 製造メーカーやIT企業で長年クライシスコミュニケーションに携わる、東北大学の長沼史宏氏(特任准教授、コミュニケーションアドバイザー)も、小学館の対応には不誠実な印象を強める点があったと指摘する。

専門家が指摘 小学館の“初動のマズさ”

 長沼氏が一例として挙げたのは、マンガワン編集部名義(2月27日)と小学館名義(28日)、それぞれの謝罪声明の足並みがそろわなかった点だ。「(片方が)犯罪者をサポートしているような構図になった。当初から全社を挙げて対応すべきだった」という。

マンガワン編集部名義での声明(左)と、小学館名義での声明(右) いずれもマンガワン公式サイトや小学館公式サイトから引用、以下同

 他にも、28日の声明に「小学館」としか署名がなく、どの部署や管理者に責任の所在があるか明らかでない点や、対応がネット上で終始している点も、事態を軽視しているような印象を強めたと話す。

 タイミングにも問題があった。今回の騒動が広がったきっかけは、2月20日に札幌地裁が下した判決だ。判決では、男性が教え子に性的虐待を繰り返していたとして、男性に1100万円の支払いが命じられた。

 この事実が報じられた後、Xでは男性と山本氏が同一人物だとする告発投稿が物議に。その根拠として「漫画の配信や単行本の出荷が停止している」と指摘する声も相次いだが、長沼氏は「本来であれば20日やそれより前に小学館側から明らかにすることが重要だった。SNSで話題になる前に小学館側から発表し、徹底的な調査や、場合によってはこの時点で第三者委員会を設置する発表もできたはず。リスク広報の教科書的な観点から見ても、そうした対応が真摯(しんし)な姿勢を示すものだった」と指摘する。

 「個人の問題ではなく、組織の問題であることが見え隠れする形になった。根本的な問題は、編集担当者がなぜ問題のある作家を起用し続ける判断をしたか。その検証や再発防止が重要。今後は早急に謝罪会見を開き、潔い姿勢を示すことが必要」

露呈した「不祥事は金曜午後に発表」への不信感

 同じくタイミングの問題として、最初の謝罪声明を金曜日の午後に発表した点もSNSで批判の対象となった。例えば「金曜午後に発表すれば、土日で話題が沈静化すると考えていたのではないか」といった具合だ。

 実はこの「金曜午後に発表」という手法、小学館の一件に限らず、セキュリティインシデントや不正会計など、さまざまな不祥事の発表で頻繁に見られる手法でもある。土日は報道機関も身動きが取りにくいことや、別のニュースが話題になれば追及が弱まることを期待するわけだ。

 ただし長沼氏は「準備に時間がかかり、結果的にその時間帯での発表になる可能性もあるが、今後なぜそのタイミングでの発表になったのかという追及は今後もついて回る」と指摘する。「発覚した段階で発表しておけば、そういった疑念は持たれず、後々の対応にも響く。寝かせれば寝かせるほど追及も厳しくなる」という。

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